病院でもトイレットペーパー騒ぎと同様なことが起きていた

 一連の通達を目の当たりにした医療現場には少なからず衝撃が走った。緊急事態とはいえ、厚労省がPPEの再利用を推奨した事実に、物資不足の深刻さを改めて思い知らされることになったからだ。そこから、危機感を強めた一部の医療機関では、国が確保して都道府県から配られる予定のPPEを悠長に待っていられないとして、独自のコネクションやルートを使って確保に邁進した。例えば、さる大手病院グループは中国の業者と直接やり取りして、PPEを買い付けた。

 そうした噂が広まると、他の病院グループなども焦って、同様に独自ルートを使っての入手を急いだ。そもそも、都道府県から配布される分については、ほとんどルール化されていない状況で、「配り方がいい加減」(病院関係者)といった不満の声が相次いでいた。こうして、同時多発的に各病院による医療物資争奪戦が繰り広げられるに至ったのである。

 するとこんな結果も招いた。医療物資争奪戦に挑んだ、さる地方病院の理事長は、「実は当院のPPEは現在、だいぶ余っている状況」だと打ち明ける。感染症指定医療機関ではない同病院では、COVID-19が流行してすぐは、感染症の実態がなかなかつかめなかったこともあり、感染者を集めたゾーン以外ならそこまでの重装備は必要ないなどという発想には至らず、ある意味、PPEの過剰な使い方をしていたという。

 それで在庫が減っていく中、徐々に使い方を変えていったところ、厚労省の通達に慌て、物資をかき集めた。既に、地域の感染状況はとっくに収束しているため、当面、だぶつく在庫を使用する見込みはなく、「通常相場よりも高値でそろえたので、冷静に判断すればよかった」と、理事長は悔やむばかりだ。世間では一時、COVID-19の拡大に伴う品不足を恐れてトイレットペーパーの買い占め騒動があったが、「うちも含め医療機関でも同様なことが起きたということ」と自嘲して見せた。