厚労省主導でPPE使用のガイドライン作成を

 不足する医療物資を巡っては、安倍晋三首相が先月24日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、「医療現場に一つでも多くの医療防護具を届けるため、状況把握システムの構築、体制整備を早急に進めてもらいたい」と指示していた。それを受け、厚労省では5月に入り、病院および PCR 検査を行う診療所の計約8000施設を対象としてウェブ調査を実施し、医療用物資の備蓄のひっ迫状況を毎週把握した上で、在庫が著しく不足している医療機関には、同省から直接、緊急配布。それ以外には医療機関の要請に応じ、追加的に都道府県から物資を配布する仕組みを構築した。現在は、同省のウェブサイト上に、「医療機関に対する政府確保分のマスク等の医療用物資の配布状況及び今後の配布予定について」と題した実績報告が週次で掲載されている。

 こうした仕組みが構築されているなら、もう安心なのか、第2波にも備えられるのかと言えば、答えは明らかにノーである。厚労省の構築した仕組みは、突っ込みどころ満載だからだ。

 第1に、ウェブ調査では、各医療機関に対し、在庫量、想定消費量、購入予定量などを週次で答えてもらっているが、想定消費量や購入予定量は各医療機関の判断に委ねられていてルール化されていない。従って、そこから第2波に備えて、全国の医療機関でどの程度の備蓄を用意しておくべきかを導き出すことはできない。「足りないから頂戴」と言っているところに、求めに応じた分量を配るにすぎないのだ。しかも毎週報告してもらう必要があり、在庫数に応じて自動発注するシステムなどとは一切、連動していない。

 第2に、都道府県を通じての配布も、一向にルール化されていないまま、今に至っているため、公平さに欠けているのではないかなど、医療現場の不満はぬぐえていない。

 第2波に備えては、まず有事の際のPPE使用のガイドライン(GL)を厚労省主導で作成する。新興感染症に対し、どれだけの対策をすればいいのかについては、感染症専門医以外はなかなか正しい知識を持ち合わせていないとされているのも事実。だからこそ、先に見た地方の病院では、当初医療物資を過剰に使い過ぎ、なくなれば不安にかられ、買い占めに走って、高値でつかんだものの、余らせる結果となってしまった。多発した医療物資争奪戦の背景には、同様に知識不足からのパニック買いも少なからずあったとみられる。

 GLを作成したら、厚労省は地域ごと人口動態などを踏まえて想定し得る患者予測数を算出して、GLに応じた医療用物資の使い方をした場合のPPE必要総数を試算。そしてそれをどの医療機関にどれだけ配分するかを病床数や医療機能などに応じて、ルール化する。

 国全体で必要となるPPEの総量が判明した後は、経産省の出番だ。国内外のメーカーと掛け合って、備蓄枚数を確保する、もしくは必要になった際に急きょ製造してもらう契約を取り交わす。加えて、その後の医療機関への流通ルートも確保しておく。

 以上のように厚労省と経産省の連携プレーは欠かせないだろう。また、リアルタイムでニーズを拾って、自動発注システムがかかり、もし全体の供給量が不足していれば、AI(人工知能)がその都度、臨機応変に医療機関への配分ルールを調整する、といったことまで進めば理想的といえる。そこには民間の力を上手に活用することが欠かせない。

 とはいえ、厚労省と経産省は縄張り争いがひどいし、産業振興を後押しする経産省は積極的に民間活力を使っていく方向であるのに対し、厚労省は何かと自前でシステムを作りたがって、民間をうまく活用しない傾向がある。だから一筋縄ではいかないのでは──。

 筆者のこれまでの取材経験からはついついそう思いがちなのだが、どうやら杞憂のようで、そう遠くない時期に厚労・経産とで第2波に備えた医療用物資の確保に関するプロジェクトチームが立ち上がる方向だ。その協議の行方を見守りたい。

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