企業が従業員の健康に配慮する健康経営。政府は近年、成長戦略の一環として普及に力を入れており、その旗振り役を担うのが経済産業省だ。同省では2015年より、東京証券取引所と共同で従業員の健康増進に積極的な上場企業を選定し、「健康経営銘柄」として毎年公表。2017年からは、日本健康会議とともに、上場企業に限らず、従業員の健康施策が優秀な大企業や中小企業などの法人を顕彰する「健康経営優良法人制度」をスタートさせた。

健康経営で業績や企業価値がアップ?

 経産省は健康経営について、「企業が従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することは、従業員の活力向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される」と言っている。また、従業員の健康の保持・増進のために必要な経費は単なる「コスト」ではなく、将来のための「投資」であるとも強調する。つまり、投資をして従業員が健康になれば組織は活性化する、組織が活性化すれば業績や株価が向上するので投資リターン(成果)を得られる、だから健康経営に取り組もうとのロジックだ。実際、その論を裏付ける各種データも示している。

 よく取り上げるのが、多くのヘルスケア関連製品を取り扱う世界的企業のジョンソン・エンド・ジョンソンの事例。グループ会社250社で働く約11万4000人の従業員たちに対して健康維持促進プログラムやワークライフバランス支援などを実施した結果、1ドルの健康投資に対して約3ドルの投資リターンを得ることができたという。

 最近では、日本の例として、健康経営度調査(健康経営銘柄や健康優良法人制度の選定時に行う調査)に回答した企業の業績は、TOPIX銘柄と比較してハイパフォ-マンスであるとの調査結果も掲げている(図1)。このほか、健康経営をしている企業では離職率が低いといったデータも示し、健康経営は業績アップのみならず企業価値の向上にもつながることを強調する。

図1●健康経営と企業業績の関係性(出所:経済産業省「第20回健康投資WG事務局説明資料[2019年3月28日])