岸田文雄首相の諮問機関である規制改革推進会議は5月27日、約300項目の規制緩和策を盛り込んだ答申をまとめ、政府に提出した。政府は答申を反映した規制改革実施計画を6月7日にも閣議決定する。

 この答申を受けての規制改革実施計画というのはなかなかに重たいものだ。そして、関係省庁はその重さをときにうまく利用する。

 どういうことか。

 規制改革推進会議は、テーマごとに作業部会を設け、関係省庁や有識者が参加して議論を重ねながら改革案を作っていく仕組みをとる。医療・介護分野なら所管の厚生労働省が適宜、現行規制について説明したり見解を述べたりする。推進会議メンバーは規制緩和を望むも厚労省がなかなか首を縦に振ろうとしないというのはよくある光景で、侃々諤々の議論が行われることも少なくない。

 もっとも、最終的には推進会議メンバーの意見がメーンで改革案がまとまる決着が多いわけだが、そこからは厚労官僚にとって悩ましい時間が流れる。医療・介護分野、なかでも医療分野の規制緩和については、医師会や薬剤師会など医療関係団体から「そんなのを認めるべきではない」といった強いプレッシャーをかけられがちなのだ。

 通常、厚労省の医療系審議会は、厚労官僚が成案になる前のものをそれら関係団体に見せては何とか了承を得られるよう修正を加えて取りまとめを作成するのがお決まりのパターン。とりわけ医師会は厚労官僚相手に強く出る。結果、審議会での協議内容からいつのまにかトーンダウンした取りまとめになってしまうことも多い。

 だが、首相の諮問機関である規制改革推進会議にはその厚労省審議会パターンは通用しない。厚労官僚が医療関係団体の意向を踏まえて規制緩和策を押し戻そうとしても、推進メンバーが納得しなければ大きく変えるのは到底無理で、微修正ぐらいしかできない。それでもプレッシャーをかけてくる関係団体に対し、厚労官僚はひたすらがまんするのである。

 その後、答申が決まり、政府の規制改革実施計画にも盛り込まれた内容については、厚労省は政府の方針として着実に実行に移す必要がある。

 ということで、この一連の流れはこんな風に活用できる。

 厚労省にとって例えば「A」という施策は、医療の効率性などから取り組むべきであると考えていたり、取り組む必要に迫られていたりするものの、医師会や薬剤師会の強い反発で手をつけられずにきた。だが、「A」の施策が規制改革推進会議の俎上にのれば、医師会などにつぶされずに進む可能性が高まる。そして答申から規制改革実施計画にも入れば、「A」の施策は着実に実行しなければならない。そのため、厚労省サイドは「A」の施策をわざわざ規制改革推進会議の俎上にのせるように仕向ける。

 実際、こうした例は過去にいくつかある。ここで詳述はしないが、今回もいろんな思惑が見え隠れする。

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