6月1日、厚生労働省のホームページに「令和3年度かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業実施団体の公募について」という資料が掲載された。各医療関係団体にヒアリングを行ってかかりつけ医機能を発揮する好事例を収集、さらにその中身を精査するなどしてかかりつけ医機能に関するエビデンスを明らかにし、報告書を取りまとめる──そんな事業を請け負う団体を募集したものだ。採択された場合、事業費用として国の補助金 4561万4000円(上限)を受け取れる。

 約4600万円だ。それだけの費用をかけてまでかかりつけ医機能の好事例を集めるのはなぜなのか。

 厚労省は昨今、医療提供体制改革の大きなテーマとして、「外来機能の明確化とかかりつけ医機能の強化」を掲げている。入院医療をめぐり同省は、団塊の世代がすべて75歳以上になる、いわゆる「2025年問題」を乗り切るため、病院・病床の機能分化を強力に推し進める施策を既に実施済み。具体的には、病床を持つすべての医療機関に対し、病棟ごとに高度急性期・急性期・回復期・慢性期のいずれかの「機能」を選択させて、病床の整理・再編を促す「地域医療構想」の制度を2014年にスタートさせた。

 一方、外来医療をめぐっては、機能分化が遅れているのが実情で、事態が動き始めたのは昨年末のことだ。厚労省は、医療資源をどこまで活用しているかなどに応じて外来機能を幾つかのパターンに分けた上で、各医療機関にはどの外来機能を担っているかを報告させて、都道府県が策定する医療計画上に記載するなど“見える化”を進めることにしたのだ。この制度は2022年度のスタートを予定する。

 こうして外来機能の明確化を進めるのとセットで持ち上がったのが、かかりつけ医機能の強化だった。厚労省としては、かかりつけ医機能を担う医療機関から医療資源を重点的に活用する外来を担う医療機関につないでいくなどの機能分化・連携を進めたい考え。だが、厚労省の検討会では、かかりつけ医機能を強化することへの異論はなかったものの、「そもそもかかりつけ医機能の定義が明確ではなく、かかりつけ医機能に対する国民の理解も進んでいない」といった意見が噴出。結果、同省は「事例などを調査・研究し、かかりつけ医機能にかかる好事例の横展開を図る」こととし、2021年度予算を確保した上で、冒頭の事業実施を決めたのだった。

 なお、日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)はかつて2013年8月に合同提言「医療提供体制のあり方」の中で、かかりつけ医の定義とその機能を提示した経緯がある(関連記事)。だが、それは過去のこととしてある意味、“スルー”され、国としての明確な定義づけが進むことになった。