厚生労働省は5月29日、少子高齢化がピークを迎える2040年に向けた社会保障や働き方の改革案を示した。深刻な人手不足を踏まえ、高齢者の雇用促進や、バブル崩壊後の就職難で不安定な生活を送る人が多い「就職氷河期世代」への集中支援策を盛り込んだ。このほか、医療資源の分散と偏在、医師の過重労働などを招いている非効率な医療提供体制の見直しや、膨大な量の保健・医療・介護データを有機的に連結して解析する「データヘルス改革」を進める旨も明記した。政府が今月中にまとめる、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に反映させる。

 これら改革の実施により、社会保障の充実や成長率の維持につなげるというのが厚労省の狙い。だが、この報告書のどこを見ても、極めて深刻な課題と言える社会保障財政の健全化に向けた具体策については特段触れられていない。

 それもそのはず、夏の参院選が控えているからだ。参院選を前に、安倍晋三政権が看板政策として唱えるのは、子どもから高齢者までが安心できる「全世代型社会保障制度」の実現。上記の厚労省案も、その意向に沿った内容となっている。

 それにしても、2012年12月の第2次安倍晋三政権発足から6年半が経過し、この間、社会保障改革を巡る議論は様変わりしたとつくづく感じさせられる。

 時計の針を巻き戻せば、社会保障の充実を一応の看板にした民主党政権時代、厚労省の存在感はそれ以前に比べて大きくなった。財務・外務・経産・警察で固められた総理秘書官の一角に厚労官僚が食い込み、副総理や官房長官の秘書官にも就くなど、戦後初めてとも言うべき重用を受けた。片や、経産省は政権に距離を置かれ存在意義が小さくなった。

 だが、再び自民党が政権を奪取し、圧倒的な支持を受け安倍晋三首相が誕生すると、アベノミクスを打ち上げ、就任直後から官邸や内閣府の重要ポジションに経産省出身者を次々に抜擢。結果、経産省の影響力が相対的に増した。