医師の長時間労働の背景にある業務・組織のマネジメントの課題

 ではこの予算をどう見るか。筆者は正直言って「手厚い」と感じている。

 遡ること5年前、2014年施行の改正医療法に基づき、各都道府県に「医療勤務環境改善⽀援センター」の設置が決まった時点で、筆者は医療従事者の「厚遇ぶり」を感じていた。同センターは勤務環境の改善に取り組む医療機関を支援する組織で、社会保険労務士や医業経営コンサルタントなどの専門家が、医療機関からの相談に応じたり、必要に応じて助言を行っている。

 医療機関で働く人に限って勤務環境を改善するため支援組織が全国にくまなく公的機関として置かれる。これは極めて異例だ。その他の働く人々に関して、同様のセンターは存在していないのだから。

 各都道府県に専門の公的機関を設置しなければならないほど、医師をはじめとする医療従事者の労働環境は劣悪であり過酷である側面を、筆者もこれまでの記者生活でずいぶん見てきた。身近な人間にも激務に追われる医師がいて、どんな生活ぶりかは比較的よく分かっているつもりだ。

 ただ、医療機関では労務管理がおろそかになりがちなのも事実。特に医師の労働時間管理は満足に行われておらず、雇用契約時にはざっとした年俸を提示して「これで働いて」とするのみ。そんな例は枚挙にいとまがない。

 医療機関では労務管理がぜい弱だからこそ、医療勤務環境改善支援センターには社会保険労務士が配置され、専門的アドバイスを行っている。それでもまだ足りないので、厚労省は今年度、医師の働き方改革に向けた地域リーダー育成や病院長研修を実施するための予算などを積み増したと言える。図らずも、医師の長時間労働の背景に個々の医療機関における業務・組織のマネジメントの課題があることは、医師の働き方改革を議論する厚労省の有識者検討会が今年3月末にまとめた報告書でも触れられていた。