コスト増は診療報酬で賄うべき!?

 医師をはじめとした医療従事者の働き方改革に15億円の予算を計上した厚労省。さらにその上、医療団体からは診療報酬上での支援を求める声も相次いでいる。

 実際、診療報酬を検討する中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関、中医協)では、5月29日に開いた総会で、医師の働き方改革に関する診療報酬上の扱いについて激しい議論が繰り広げられた。

 「今年4月から働き方改革関連法が施行されたことで、医師以外は勤務体系が変わってきている。夜勤スタッフ確保のためにコスト(人件費)が高騰し、病院経営は厳しさを増すばかり。全病院に共通する入院基本料の引き上げなどを考えるべき」。こう強く主張したのは、診療側委員の猪口雄二氏(全日本病院協会会長)。これに対し、支払側委員の幸野庄司氏(健康保険組合連合会理事)は「違和感を覚える」と不快感をあらわにし、「全ての企業で働き方改革が行われる中、経営トップがマネジメント改革をするところから始めており、入院基本料の引き上げや加算の創設は到底認められない」と、真っ向から反論した。

 診療報酬を負担するのは、国と保険者、そして患者本人だ。医師をはじめとする医療従事者の働き方改革に伴うコスト増を診療報酬で手当てするとなれば、結局、国民の負担が増えることになる。

 自分たちの取り組みに無駄はないのか、生産性を上げるために工夫の余地はないのか、できる限りの手は尽くしたのか──。医療団体は、診療報酬引き上げを求める前に、これらを確認し、医療現場でできることをまずはとことんやりぬく姿勢が肝心ではないかと筆者は感じている。

 診療報酬に関して言えば、1998年以降、改定率はマイナスかごく微増にとどまる。診療報酬改定に振り向けられる財源がなければ、報酬項目のどこかを削り、その分を引き上げが必要な個所につけ替える作業が数多く必要になる。

 改定の原資が限られる中、点数の引き上げや加算の創設など、評価が拡充されるのは、基本的に現場発で効果を上げている取り組みに対して。一例として、「メディカルクラーク」などと呼ばれる医師の事務作業を補助する職員を配置した場合に算定できる「医師事務作業補助体制加算」は2008年度診療報酬改定時に新設されたが、これはその報酬がつく前から、実際にクラークを配置して、勤務医の負担軽減に効果を上げる病院があったため。「診療報酬は努力したら報われるべきもの」というのが厚労省のスタンスなのだ。

 医師の長時間労働の背景にある個々の医療機関における業務・組織のマネジメントの課題に徹底して向き合い、結果を出している。それでもなかなか採算が取れず苦しんでいるようなら、その先に診療報酬の手当てが検討される。そんな順番しかないはずではと筆者は考える。

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