新たなフェーズに入ったのは間違いない。政府が6月7日に閣議決定した「骨太の方針2022」には、医療DXの推進が明記。だいぶ書き込まれていて、力の入れ具合がひしひしと伝わってきた。

 最大のポイントは、医療機関や自治体、保険者などをデジタル情報でつなぐプラットフォームづくりを進め、患者の治療経過や投薬内容、レセプト情報、予防接種の履歴、特定健診・自治体検診結果などを全国で共有できるようにする点。患者情報を一元的に把握することで、医療の効率化や質の向上を図る。さらに、医療機関の経営状況について全国的な電子開示システムを整備し、「見える化」による医療費の適正化も狙う。

 今後、首相を本部長とする「医療DX推進本部」を政府内に設置して、精力的に取り組みを進めていく。

 さて、医療DXが実現した際にはどんな未来が待ち受けているのか。経済産業省は一足先に、そのイメージを具体化して見せた。6月8日に開いた健康・医療新産業協議会で、「デジタル化による未来の健康づくりイメージ」と銘打って3パターンを披露したのだ。

 同協議会は、健康寿命の延伸に向けた産業育成などについて官民一体となって具体的な対応策を検討する場。委員には、日本医師会や日本製薬工業協会のトップ、日本商工会議所の会頭、県知事らが名を連ねる。また、関係省庁として、厚生労働省、総務省、文部科学省、国土交通省なども加わる。

 経産省がイメージを示すにあたり現状の課題としてとらえたのは、デジタル技術が進化してウエアラブル端末などが登場するも、それを使う個人の健康意識だけに頼っているため、必ずしも行動変容につながっていないこと。個人任せでは限界があり、長続きしない恐れもあるため、(1)医師、(2)職場、(3)地域と連携する仕組みを実現すべきではないかとしてそれぞれのイメージを示した(下図)。

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(出所:経済産業省)
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(出所:経済産業省)

 (1)の医師との連携については、こんな具合だ。現状は例えば糖尿病の患者が受診した場合、医師の時間も限られるため、毎度同じ検査と指導ばかり。その後は、人によってウエアラブル端末やアプリなどを使うかもしれないが、飽きてしまってやめるケースも多い。それを、今後は医師が患者の過去の様々なデータをしっかり把握して、それをベースに個別化された処方や指導を行う。その上で、医師は患者にアプリの使用などを進め、定期的にデータをチェックして必要に応じて適宜サポートする。医師の目があることが、健康行動を持続させるインセンティブになるといった考えだ。

 (2)の職場との連携に関しては、健康診断に工夫を凝らし、健康状態によって体力測定なども含めて検査項目をカスタマイズしたり、基準判定だけでなく、細かなリスク分析を行って具体的な健康指導につなげたりする。また、健診結果を踏まえ、企業がアプリやフィットネス、フェムテックなどの利用を支援する。

 (3)の地域との連携は、自然に健康になれるまちづくりを目指すもので、今後、自治体は住民の日々の生活関連データを活用して、セグメントに応じた効果的な介入を行っていく。また小売や飲食など他産業と連携して、スマホ一つで、買い物時に個人の栄養状態を踏まえたメニューや食材のリコメンドが行われるといったものを想定する。

 経産省が今回、こうしたデジタル化による未来の健康づくりイメージを示したのは、実行に移すための課題を浮き彫りにする狙いもあった。実際、この日の会合でも委員からは、セキュリティ確保やデータの帰属の問題、デジタル弱者への対応などに関して、懸念の声があった。

 もっとも、課題が鮮明になれば、あとは解決への道をひた走るだけ。この先、経産省をはじめ関係省庁の手腕も大きく問われることになる。政府の動向を見る限り、今の流れはスピード感をもって進められる可能性が高く、この分野に挑むには早めの動き出しが欠かせない。

(タイトル部のImage:kichigin19-stock.adobe.com)