薬剤師の養成や質の向上について議論を進めてきた厚生労働省の検討会が6月16日開かれ、同省が示した取りまとめ案を大筋で了承した。今後、幾つか文言修正が行われた後、正式な取りまとめが6月中にも公表される。

 この取りまとめ案を見て目を引くのは、薬学部の入学定員の抑制に言及した点だろう。それもさることながら、筆者自身は他に注目したポイントがある。

 正直言って、薬学部の入学定員抑制についての記述は、むべなるかなである。取りまとめ案では、「入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模のあり方や仕組みを早急に検討すべきである」と明記。もともと骨子案の段階では、「入学定員数の抑制が必要か否かも含めて検討すべき」と記載されていたが、「必要か否か」といった回りくどい表現がなくなり、かつ「早急に」という文言が追加された。

 厚労省は4月末に、将来的に薬剤師が過剰になると予想した需給推計結果を公表しており(関連記事)、検討会委員はその内容に危機感を強めていた。それゆえ、骨子案のある意味、のんびりした書きぶりは改められたわけである。

 早急に検討を開始したところで、実際に入学定員が削減されるまでには、5~6年はかかるとみられる。医師や歯科医師の例がそうだったからだ。どちらも1982年に定員抑制の閣議決定がなされたが、各大学との調整もあり、実行までには時間を要した。

 今回の取りまとめ案には、薬学部の入学定員を抑制せざるを得ない背景がいろいろ書き込まれている。

  • 2006年から薬学部6年制がスタートしたが、その前後の2003年~2008年にかけて薬学部・薬科大学の新設が相次ぎ、入学定員数は2020年には2002年の約1.4倍に増え、現在も大学が新設されている

  • 一方で、毎年入学定員を充足していない大学、入試の実質競争倍率が相当低い大学(1.08~1.1倍程度)が存在している

  • 入学しても、入学後の進級率/卒業留年率は大学によって非常に大きな差があり、標準修業年限の6年間で卒業し、国家試験に合格できる学生は私立大学の場合6割に満たない状況である

 これらの事情を踏まえれば、入学定員の絞り込みはやはり避けられないといえる。

薬局間で進む優勝劣敗

 では、取りまとめ案で筆者が何に注目したかというと、次の記述だ。

処方箋枚数は、高齢者人口の増加等により当面は増加するが、将来的には減少すると予測されていることから、これまでのような医薬分業の進展に伴う処方箋の増加に対応したビジネスモデルは成り立たなくなり、薬局の本来の役割を発揮するためには、処方箋を持たなくても住民がアクセスできるような業務を行うべき。調剤だけが薬局の役割であるかのような「調剤薬局」という名称が用いられる状況は変えていくべき。

 「薬局の本来の役割を発揮するためには、処方箋を持たなくても住民がアクセスできるような業務を行うべき」というのが肝になるわけだが、この箇条書きの前後の文章を読む限り、薬局の本来の役割とは具体的に以下の内容を指すとみられる。

 日常的な医薬品の供給拠点であり、かつ住民の生活を支えていく取り組みを実践している。災害時には医薬品供給に加え、衛生管理として避難所の消毒や感染症対策への対応を行っている。学校等での公衆衛生活動にも尽力し、環境衛生や薬物乱用に努め、さらに感染症防止対策にも対応する。

 また、緊急避妊薬の取扱いについても言及されており、薬剤師として、女性の健康に関する相談など適切な対応もできるようにすべき旨が記載されている。

 こうした取り組みを幅広く行うのが薬局であり、業務を調剤に限ることはあるべき姿ではない、ひいてはこの先、調剤薬局という名称が用いられる状況は変えていくべき、とまで言っているのだ。

 現在6万軒を超える保険薬局のうち、調剤を専業としているところは少なくない。そこに「ノー」を突き付けた格好だ。調剤薬局が消えゆく運命なら、現在、調剤を専業とする薬局は生き残るために機能転換を図っていくことになる。こうして薬局間の競争は激化。優勝劣敗が加速することになるだろう。

 国策として医薬分業を推し進め、結果として調剤薬局という形態を生み出したのは、他でもない、厚労省だったはず。だが、今になって調剤薬局の業態変革を求めてきたわけだ。そこに複雑な感情を抱く薬局関係者は多いと思うが、フェーズが変わった以上、それに対応しなければ生き残りはおぼつかないだろう。

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