新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う緊急事態宣言が全面解除されて1カ月。次の焦点は再び感染が拡大する「第2波」への備えに移っている。

 最優先の課題は、医療崩壊を決して起こさず、感染患者が急激に増えても対応できる医療提供体制の構築だろう。政府が7月中にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針)においても、コロナ危機に向け、「医療提供体制の強化」を柱の一つに据える方針だ。

 具体的な強化策は、骨太方針が閣議決定された後、厚生労働省内での協議を通じて細部が詰められる予定だが、既に一定の方向性は見えている。ずばり、COVID-19の第2波を見据えた病床確保と医療機関間の役割分担だ。

 実際、厚労省は6月19日に、都道府県に対して、地域の人口構成やこれまでの患者増加スピードを考慮の上、第2波に備えた病床確保計画を7月上旬に策定し、下旬までに整備するよう通知したところ。病床は、感染が確認された際にすぐに患者を受け入れられる「即応病床」と、普段は一般診療に使用する「準備病床」に分けて確保するよう求めており、感染が拡大すれば、段階的に準備病床を即応病床に切り替えていく(図1)。軽症患者や疑い患者についても、これまでのように宿泊療養施設だけに頼るのではなく、医療ニーズの比較的高い患者は病床で受け入れる考えだ。

図1●病床の確保状況の把握についての考え方(出所:厚生労働省「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」、図2も)

 政府の専門家会議の推計によると、第2波で想定されるピーク時の入院患者数は全国で最大約9万5000人に上る。

軽症や疑い例は「協力医療機関」が受け入れる

 医療機関間の役割分担としては、中等症や重症の患者を主に受け入れる「重点医療機関」、軽症例や疑い例を主に受け入れる「協力医療機関」、さらにはCOVID-19の治療を終えた患者の転院先や紹介先となる回復期病院や在宅医療機関も含め、機能ごとに体制整備を目指す(図2)。

図2●医療機関間の役割分担についての考え方

 今般の感染拡大時には、大規模な基幹病院にも軽症患者が入院し、新たな重症患者の受け入れに支障が生じるといった事態が起こっており、その反省を踏まえての対応だ。なお、都道府県がこうした病床の確保・整備に取り組むに当たっては、国の新型コロナ対応の臨時交付金を活用できる。

 COVID-19の新規患者が一定程度落ち着いてきている今こそ、各地域で必要な医療提供体制を再構築する必要があるのは間違いないし、急務だ。とはいえ、これらのスキームが実際に機能するのか、一抹の不安を覚えるのは筆者だけだろうか。

 理由はこうだ。

 第1に、コロナ危機に備えた医療提供体制の再構築には、公立・公的病院のみならず、民間医療機関の協力が欠かせない。民間を含めて一体的にまとめ上げるは至難の業で、都道府県によっては対応しきれないところも出てくるのではないか。

 第2に、いくら病床の整備を進めても患者をしっかり診られる医療従事者が足りなければ、万全な対応が取れずじまいとなる。そのため、医療人材の養成や確保が不可欠だが、その部分の対策が不十分だ。

 医療人材の養成や確保に関しては、厚労省の通知においても、各都道府県に対し、COVID-19患者への対応に必要となる研修を行うよう求めるほか、厚労省で同様の研修を実施することを検討する旨、明記している。ただ、どれだけ実効性があるものとなるのか。官の行う研修を積極的に受講して、コロナ危機が起きれば、人手不足でコロナ患者の対応に追われる病院の手伝いに駆けつける医療従事者は恐らくごく限られるだろう。

 上記の第1、第2の問題点をクリアしようとすれば、頼りとなるのは日本医師会(日医)をおいて他にないのではないか、というのが筆者の考えだ。

医療提供体制の再構築で求められる日医のリーダーシップ

 あまり報道されていないが、今般のCOVID-19拡大では、医療現場の様々な課題が浮き彫りになった。例えば、COVID-19患者への対応に追われる病院は多忙を極める一方で、それ以外の医療機関は患者がコロナ禍を恐れて受診を抑制するため、患者が来ずに暇を持て余していた。また、COVID-19にかかった疑いのある患者の診察をことごとく拒否した医療機関が存在するのも事実だ。どちらもそれで経営面のダメージが避けられなかった。

 それならば、前者はCOVID-19対応で忙しい医療機関へ応援部隊として出かけていく方法もあっただろうし、後者については、そもそもなぜ診療しないのかと疑問に思う向きも少なくないかもしれない。

 けれど、その答えはいたってシンプルだ。「感染症の専門教育を受けたことがないから、この新興感染症を取り扱ったり、応援部隊として働くことなどできない」というのがほとんどなのだ。確かに、日本では新興感染症を専門に診られる技量を持つ医師はまだ少なく、一部の病院にしかいない。だからこそ、そうした専門家から教えを受けるチャンスはごく限られる。

 いや、でも国の有事だからこそ、医療界が総力を挙げて、難局を乗り切るしか道はなく、その司令塔となるのは他でもない日医だ。
 
 日医のリーダーシップの下、その傘下の都道府県医師会が各都道府県の医療提供体制の再構築を全面的にサポートする。また、コロナ対応研修も日医や都道府県医師会が主催して、各地で危機的状況が起きればいつでも当該医療機関に駆けつけられる医療従事者を養成しておく。

 医師の職能団体として、極めて大きな社会貢献活動と言えるだろう。医師会の協力を仰ぎたいのは、厚労省も思うところであり、さる幹部は「日医と早くそんな話ができれば」と語っていた。

 では肝心の日医はと言えば、今週末に予定される会長選挙が大賑わい。現職の正副会長による史上稀にみる激戦が予想されており、終わっても当面しこりが残りそうな気配だ(関連記事)。厚労省との間で建設的な話が進むのはいつになることやら。このロスタイムはあまりに残念でしかない。

(タイトル部のImage:kichigin19-stock.adobe.com)