日本の医療界は規制だらけ。何をやるにも障害が多過ぎてなかなか動きがとれない──。そんなイメージがあるとしたら、もう古いかもしれない。ここ数年で状況は大きく変わっているからだ。

 財政再建を後回しにしてでも、経済成長や生産性向上を優先する安倍晋三政権。毎年、成長戦略を練る中、成長力の底上げに向け、これまで政府全体として規制改革を強力に進めてきた。

 中でも目玉となるのが、昨年6月施行の「生産性向上特別措置法」によって創設された新技術等実証制度、通称「プロジェクト型『規制のサンドボックス』制度」だ。日本の成長を妨げる“何か”を取っ払って、産業の新陳代謝を高める奥の手として用意された。

 サンドボックスは、日本語で砂場の意味だ。子供が安全の確保された砂場で思いっきり遊ぶように、必要なら規制を凍結して企業が限られた期間や範囲で自由に新しいサービスを試すことを認める仕組みが、この制度に当たる。

既存の規制にとらわれず「まずやってみよう」を推進

 これまでにないビジネスに挑戦したい。しかし事業として行えば規制に抵触し、世の中に実装できない。こうした状況を打破するために、サンドボックス制度では、規模・範囲を限定した上で、企業に規制を即時適用せず、新しい技術やサービスをあくまで実証実験として展開してもらう形とした。政府としては、実証によって得られたデータを基に、各種規制の見直しにつなげ、画期的な新事業の創出を促す狙いがある。

 サンドボックス制度の流れは図1の通り。企業は提案を内閣官房の一元的窓口を通じて、規制の所管省庁に出す。その後、規制の所管省庁は、専門家を集めた評価委員会の意見を聞いた上で、認定の可否を示す。ここで提案が認められれば、規制が一時的に停止され、企業は実証実験が可能になる。実験の結果に問題がなければ、政府は規制の見直しを検討する。

図1●「規制のサンドボックス」制度の流れ(Beyond Health 作成)

 規制を緩和して、企業の新たな事業活動を促す仕組みとしては、安倍政権はこれ以前にも二つの制度を創設していた。2014年1月施行の産業競争力強化法に基づく、新事業特例制度(旧:企業実証特例制度)とグレーゾーン解消制度だ。

 新事業特例制度とは、企業が新事業に乗り出す際、安全性の確保などを前提に自ら規制緩和策を提案し、例外扱いを認めてもらうというもの。1社だけでなく複数企業の共同提案もできる。グレーゾーン解消制度とは、法律の"黒白"が曖昧な事業について、企業が規制の所管省庁に確認できる仕組みで、適法か違法かの判断を仰げる。

 ただし、新事業特例制度については、安全性などを証明するためのデータ収集に時間がかかりコストがかさむ上、規制緩和案を企業が自ら考えなければならないため利用は低調なまま。また、グレーゾーン解消制度は法令適用の解釈にとどまるため、現行法が想定していない事業であれば対応に限界があり、かつ法に抵触するとの判断が下れば、その先には進めない。

 要はいずれも使い勝手が悪いのだ。

 規制のサンドボックス制度が画期的なのは、これまでのような既存の規制にどう適合し得るかを審査・確認するアプローチとは決別し、基本的に“規制ゼロ”の環境下で、とにかく実験してみてその結果を見てみることを許容している点だ。既存の規制にとらわれずに、「まずやってみよう」とチャンスを与えていく。