やけに踏み込んだ内容が目についた。日本経済新聞が6月25日付の朝刊一面で報じた記事についてだ。

 「かかりつけ医を定額制に 過剰な診療抑制」との見出しを掲げた記事内容を要約すると、厚生労働省は、患者が自分の「かかりつけ医」を任意で登録し、診察料が月単位の「定額制」になる制度の検討を開始。過剰な医療の提供を抑えたり、大病院の利用を減らしたりするのが狙いで、早ければ2021年に必要な法改正を行うという。

 もっとも、報道のあったその日の午前、根本匠厚労相は閣議後の記者会見で記事内容を「事実ではない」と否定。また翌26日には、これまでかかりつけ医の診療報酬などを定めてきた中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)の総会において、厚労省保険局の担当官も同じく日経報道を否定した。

 いずれも速やかな打ち消しとなったのは、日本医師会(日医)がかかりつけ医の登録制に反対していることと無縁ではない。日医にとって、誰もがいつでも自由に医療機関を選び受診できる「フリーアクセス」は国民皆保険制度の根幹という考え。登録制を導入すればフリーアクセスが阻害される恐れがあり、ひいては診療所の経営を圧迫する懸念もある。だから登録制の導入は日医が嫌がる話なのだ。

火のないところに煙は立たぬ

 では大臣も担当官も否定したのなら、記事は「誤報」ということになるのか。いや、その可能性は恐らく低いだろう。別に親会社の記事だから肩を持っているわけでも何でもない。火のないところには煙は立たぬものであり、通常、記者はそれなりの裏をとって、記事にしている(はずである)からだ。

 朝日新聞が2017年5月にスクープとして報じた獣医学部新設をめぐる記録文書の存在。政府は「怪文書」だ、「確認できない」「調査の必要はない」と強弁し続けたものの、世論に押されて再調査をしたところ、あっさり正式文書として出てきた事件があったのは記憶に新しいところだろう。

 当初は報道を打ち消すも、後にそれに沿った内容となった例は、筆者が見てきた診療報酬の世界でもある。痛烈な印象だったためによく覚えているのは、2010年度診療報酬改定時における再診料の議論だ。

 現在、診療所と200床未満の病院が算定する再診料は、診療所と病院で同じ点数となっている。だが、かつては病院については入院機能を、診療所については外来機能を重点的に評価する目的で、病院、診療所別に区分されていた。

 2009年の時点で、再診料は診療所71点、病院60点(1点は10円)。2010年度診療報酬改定をめぐる中医協の議論では、そうした病診格差を是正すべきということで、医師会や病院団体、薬剤師会による「診療側」と、健康保険組合や経団連などの「支払側」との意見が一致。しかし、診療側は病院の再診料引き上げによって、支払側は診療所の再診料引き下げによって、点数を一本化するよう主張し、互いに一歩も譲らなかった。