薬学教育にまで牙をむいた財務省

 ともあれ、財務省が厳しい目を向けるのは調剤医療費だ。薬局が受け取る薬剤師への技術料と薬代を足し合わせた調剤医療費は現在、年間8兆円近くに上り、医療費の2割程度を占める。

 実は、薬剤師数の増加により、薬局に従事する薬剤師⼀⼈当たりの処方箋枚数は減少している。財務省の分析によると、2005年を1とした場合、2017年は0.85と15%減。ずっと右肩下がりの状況だ。しかし、その間、薬局薬剤師の一人当たり技術料は維持されたままで、財務省はそれを調剤報酬の引き上げによるものと捉えている。薬局薬剤師に高い技術料が支払われているから調剤医療費の伸びに歯止めがかからない。ならば調剤報酬を大胆に引き下げるべきというのが同省の主張だ。

 さらに、財務省は薬学教育にまで牙をむいた。5月16日に行われた財政審歳出改革部会の初会合では、高等教育にかかる経済的負担軽減について議論。その中で、財務省は、6年制薬学部の卒業率や薬剤師合格率を例示し、基本的な教育の質を保証できていない大学があるとした上で、こうした大学は経済負担軽減の対象外とすることを徹底すべきと注文を付けたのだ。

 同部会は10月の消費税率引き上げに伴い、2020年度から予定される大学などの高等教育にかかる経済負担の軽減策について検討する場。消費税対応という名目ではあるが、財務省にとっては所管外である薬学教育の成果にあからさまに「ダメ出し」をしたのは、極めて異例と言える。具体的には、2012年度に6年制薬学部に入学した学生の2018年度の状況を調べ、6年間で国家試験に合格した学生の割合が大学によって19%から100%まで大きな差があったことをグラフで示し、6年制薬学教育を問題視した。

 確かに、以前から6年制薬学教育の問題点は指摘されてきた。薬剤師養成課程は2006年度に4年から6年に延長。その動きに合わせて、薬科大学・薬学部の新設ラッシュが起きた。2002年度には8110人だった薬科大学・薬学部の入学定員数は、特に私立大学において急増し、2008年度には1万3494人に達した。その後、私立大学で定員の見直しが行われた結果、微減して、2018年度は1万3040人となっている。薬科大学・薬学部数は、2002年度は46校だったが、今は74校。さらに、現在も薬学部の新設計画が複数公表されている。

 薬科大学・薬学部の新設ラッシュは、学力低下の問題を引き起こした。国公立大学や一部の有名私立大学を除き、定員割れが常態化するようになり、地方には定員充足率が4割の大学すら存在する。定員を満たしている大学の中にも、ほとんど無試験に近い状態で学生を集めているところがあり、偏差値が30台の薬学部もあるほどだ。学生のレベル低下に伴い、世間には留年生や薬剤師の国家試験に合格できない“国試浪人”があふれ、私大に限れば、6年で卒業できるのは全体の6割程度にすぎない。そして大学間の教育格差が顕著だから、財務省にも痛いところを突かれたのである。