政府が、デジタルを用いた診療報酬改定の変革に乗り出す。今年6月に閣議決定した「骨太の方針2022」では、「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテの標準化等」と並んで、「診療報酬改定DX」の取り組みを行政と関係業界が一丸となって進める旨を明記。それらの実行に向けては、首相を本部長とする「医療DX推進本部」を政府内に設置することも盛り込んだ(関連記事:骨太方針明記で新たなフェーズに入った医療DX

 ここでいう、診療報酬改定DXとはどんなイメージなのか。ヒントは、自民党政務調査会が今年5月にまとめた「医療DX 令和ビジョン2030」の提言にある。骨太方針の医療DXにかかわる箇所は、同ビジョンをベースに作られた。

 令和ビジョンでは診療報酬改定DXについて、大きく次の二つを掲げる。

  • デジタル時代に対応した診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化し、システムエンジニアの有効活用や費用の低廉化を目指す

  • 医療機関やベンダーの負担軽減に向けて、各ベンダー共通のものとして活用できる診療報酬にかかる「共通算定モジュール」を、厚生労働省・審査支払機関・ベンダーが協力して、デジタル庁のサポートも得て作成する

(「医療DX令和ビジョン2030」より一部改変)

 現状の診療報酬改定と言えば、医療現場には少なからず負担と混乱がつきまとう。原則2年ごとに行われる診療報酬改定は、3月に内容が確定し、4月1日に施行。そのわずか1カ月足らずの間に、電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)請求のためのコンピュータ(レセコン)を扱うベンダーは各施設に導入したシステムの更新を急ピッチで進める必要がある。エンジニアの作業量は膨大で、その分、医療機関側は改修経費やランニング経費がかさむことになる。また、システムの更新に伴い、医療機関のスタッフが慣れるまでに時間を要して、労働生産性の低下にもつながりやすい。

 そうした現状の課題を解決するため、令和ビジョンでは診療報酬改定DXに向けて診療報酬の共通算定モジュールの作成を提言した。電子カルテやレセコンのシステムは、各社独自のコードを使うなどして開発が進んだ経緯から、ベンダー間の互換性に乏しい。それゆえ、改定のたびに、各社でシステム改修という同じ作業にいそしむことになる。

 そこで、診療報酬の点数や患者負担金計算にかかるプログラム・ロジックをベンダーが共通利用できるよう、診療行為を類型(モジュール)化し、初診や投薬といった診療行為の内容を入力すれば、全国一律に算定点数や患者負担がアウトプットとしてはじき出されるようなプログラムづくりを、国が主体となって進めていく。共通算定モジュールができれば、改定の際も当該モジュールの更新を行うことで足り、個々のベンダーの負担は大きく軽減。結果、医療機関のコストダウンにつながり、医療スタッフもさしてシステム更新に戸惑わずに済む可能性が高まる。

 もっとも、膨大なテキスト情報で構成されている現行の診療報酬点数に関し、どこまでモジュール作成が進むかは未知数ではある。かなりの労力・胆力が必要となるのは間違いないだろう。

 それでも、いわば国家戦略として診療報酬改定DXを進めるのは、厳しい財政事情の中、医療保険制度全体の運営コスト削減につなげたいためにほかならない。デジタルの活用により、診療報酬改定に関わるすべての人の作業の効率化・作業負担の軽減に加え、レセプトチェックの量的・質的向上を推し進め、医療に関する間接的なコストの削減に尽力するというのが政府の決定だ。「さすがデジタル庁が創設されただけある」と思わせるようなスピード感ある取り組みを期待したい。

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