経済産業省が昨春からよく使っているヘルスケア産業の市場規模に関する、通称「卵の図」をご存じだろうか。ずばりこちらだ(図1)。
同省は、黄色に塗られている「公的医療保険・介護保険」のところを卵の黄身、それを取り巻く「ヘルスケア産業」、すなわち公的保険外サービスの産業群の部分を卵の白身と見立てている。
黄身の部分の公的医療保険・介護保険の給付費は、2018年度で約51兆円。政府の推計によると、団塊世代が皆75歳以上となる2025年度には約63兆円、団塊ジュニア世代が65歳以上となり高齢化のピークを迎える2040年度には約93兆円に上るという。
ちなみに、現在は税収総額が約60兆円、一般会計予算が約100兆円なので、2025年度には今の税収を超える額が、2040年度には今の国家予算近くの額が、医療・介護給付費として支払われることになる。
あまりに莫大な金額のため、黄身の部分だけ見ていると、「日本の医療・介護の公的保険制度は早晩破綻する」と、暗澹たる気持ちになる人も少なくないだろう。だが、「ぜひ白身の部分に着目してほしい」というのが、経産省の主張である。