“やりがい搾取”をあぶり出し世間の耳目を集める

 そして、提言の中では厚労省が抱える組織的・構造的課題も列挙(図2)。これらの課題によって、「個人のモチベーションや組織のパフォーマンスを下げ、労働環境を一層悪化させている」と説く。言うなればブラックすぎる職場なのだ。

図2●厚労省が抱える組織的・構造的課題

 提言に示されたブラックの実態は、民間企業では既に解決が進んでいる課題も多く含まれている。例えば、いまだに厚労省では出勤簿が紙ベースで管理されていたり、幹部の予定が毎日手書きの予定表でまとめられていたりで、デジタル化が進んでいない。また、そんな手書きの出勤簿に基づく給与支給事務については、各部局の書記室ごとに担当者を置き、各部局それぞれで同じ業務を行っているため、人員の無駄が生じてしまっている。ここでこれ以上は触れないが、時代錯誤も甚だしく驚く内容のオンパレードである。

 それだけひどい実態にありながらも、若手改革チームは希望を捨てていない。「厚労省で働く職員の誰もが、入省当時、厚生労働行政分野に課題意識と期待を持ち、ここでしかできないことがあるという思いで、厚労省の門を叩いたはず。だからこそ今こそ組織が一丸となって、職員一人ひとり改革を意識し、行動していくべきだ」として、数多くの具体的な提案を行っているのだ。

 先のデジタル化の遅れに関しては、勤怠管理システムの改修やスケジューラーの活用によって省人化する。「暑い、暗い、狭い」と負の三拍子で、“拘牢省”とも揶揄される悪評高いオフィス環境の改善に向けては、他省庁を参考にしたフリーアドレス制やオープンスペースの導入を進めていく。

 また、省庁独特の仕事として、議員への説明や質問の調整、答弁書の作成などがあるが、議員本人や議員秘書などに対する政策説明(通称:議員レク)は、スカイプなどのオンラインネットワークを活用。さらに、夜遅くの質問通告や、質問通告をしておきながら、実際には質問しなかったという“空振り”案件が生じることのないよう、議員別の質問通告時間・空振り答弁数を分析して公表するという方策も打ち出した。どれほど無理・無駄を生じさせているのか白日の下にさらされることになる議員にとっては恐怖だろう。

 どの提案も至極ごもっともで、確かにその通り進めていくべきだという内容がずらりと並ぶ。そのせいもあるのだろう。厚労省の現状に対して、働き方改革を先導する官庁でありながら、“やりがい搾取”に値することが許されるはずもないといった論調の報道は少なくなかった。これで世間の耳目を集めたのは間違いない。