かつては大山鳴動してあの大臣が……

 この若手改革チームの緊急提言について、筆者が複数の厚労省高官やOBに話を聞いたところ、皆、「やり口は見事」という評で一致した。

 「世の中の共感者を集めてムーブメントにしていこうという思いがひしひしと感じられる」とは、さる厚労省高官の弁。また数年前に厚労省を飛び出した元幹部はこんな風に語った。「本来あるべき業務を全うしたいから、環境を整えてほしい。そんな青臭さを前面に押し出して、世間の注意喚起を図り、組織改革せざるを得ない状況に持ち込んだ。彼らはいわば外堀から埋めていく作戦を取った」。

 そう、今回は外部の力を借りて改革の原動力としている点で、目新しさがある。筆者もその思いが強い。一体どういうことか。

 端的に言うと、厚労省の組織改革・業務改善話は、またぞろ飛び出したお馴染みのネタでしかない。今回の緊急提言の中には、「過去の『厚生労働省改革提言』の反省と改善点」という項があるのだが、以下に一部を引用する。

・振り返ると、過去には、外部有識者による厚生労働省改革に関する提言書のほか、省内においても職員有志による業務改善チームが幾度となく立ち上がり、その時々の職員の声を反映した提言がとりまとめられてきた。いずれも、その方向性や改革案はこの緊急提言と共通する部分も多い。

・しかしながら、こうした過去の提言は、いくつかの改善実績があるとは言え、総体としてみれば、実現された内容は乏しく、実効性は不十分だと言わざるを得ない。

 図らずもここに触れられている通り、過去には、外部有識者を交えても、省内職員有志だけでも何度となく業務改善のためのチームを立ち上げては提言をしてきた。最近の例では2017年1月に設置された「厚生労働省業務改革・働き方改革加速化チーム」が同年5月に中間取りまとめを作成。そこにはご丁寧に、厚生省と労働省が統合されて厚生労働省が誕生した2001年からの改革の歴史も事細かに書いてあるので、興味があれば見てみるといいだろう。

 そんな繰り返しの歴史の中で一向に苦しい職場環境が変わらずにきたのが厚労省なのである。そのため、今回の若手チームの緊急提言に対しても「いや、どうせ変わらないでしょ」と冷めた見方をする向きは、やはり省内外に多い。

 それでも、今回の緊急提言はインパクトが強いこともあって、メディア露出が多かった。だから「山」が動く可能性は当然ある。ただ、ここで筆者は、とあるケースを思い出す。2009年に実現した民主党への政権交代で誕生した長妻昭厚労相の時代に、同省内には業務の効率化などを目指し若手プロジェクトチーム(PT)が発足。そこで起きた事件のことだ。このPTは業務改善案をまとめる過程で、省内職員を対象に長妻厚労相ら政務三役に関するアンケートを実施。すると、「おごりを感じる」という回答が48%に達したほか、「納得のいく指示が出されている」との回答はわずか1%と、散々な結果だった。

 この調査結果も世間に大きく報道され、話題になった。ちなみに、今回の若手改革チームの緊急提言は、恐らくこのとき以来の騒がれようである。だが、長妻厚労相時代のPT報告がもたらした結末はといえば、職員にこれだけ嫌われるトップのマネジメント能力には問題があるとして、次の内閣改造で長妻氏が大臣の座を追われることになった。確かに、ある意味、山は動いた。さりとて、厚労省という巨大組織の職場環境はほぼ何も変わらず、鼠一匹ならぬ、大臣一人が飛び出したにすぎなかった。