厚労省はいつ、どうしたら報われるのか

 となると、厚労省は本当に変わるのか、変われるのかという疑問がつきまとう。

 厚労省の職場環境が劣悪を極める最大の理由は、他省庁と比べて突出した業務量の多さにある。実際、どの程度の違いがあるのかといえば、単純に仕事量だけ見ても多いが、図3の通り、職員1000人当たりで捉えても、国会答弁回数、所属委員会出席時間、質問主意書答弁数、審議会の開催回数や訴訟件数は全ての省庁でトップで、人員が不足していることが分かる。

図3 ●主な省庁の業務量比較(出所:自民党行政改革推進本部資料)

 では、なぜ厚労省の業務量が断トツに多いのか。それは、同省が所管する範囲があまりに幅広く、かつ国民の関心が高く、しかも前に進めようとしても対立を生む構造となってしまっている点が挙げられる。年金・医療・介護・福祉に労働行政で、例えば年金問題を見てみよう。この先、年金を増やすか減らすかと言えば、国の人口構成や財政事情を踏まえれば、受給総額を減らすということにならざるを得ない。ところが、減額案をぶち上げたら、世間の反発を招くのは必至のため、減らす方法にも考えられるだけの工夫を凝らす。それでどうにか政治家の了承を取り付けて、法案の提出の準備を進めても、政治家は国民の顔色をうかがい変節するのが常で、いつの間にか国会審議がもめにもめて、結局、法案提出を断念することになる。そして振り出しに戻ってまた議論を始める。そんなことは頻繁に起きている。

 政策を前に進めようとしても暴風雨にさらされ、終始、四方八方から揚げ足取りをされる可能性もあるため、半端なく緻密な条文を作り上げていかなければならないなどの業務を背負っている厚労省。とはいえ、これは同省の宿命であって、国民の生活に密着した厚生労働行政の果たすべき役割が大きいからこそ、多くの職員は仕事に「誇り」を持ち、やりがいを感じている。

 だとすれば、決してやる気をそぐことのないよう、まず政治家は厚労省の人員を増やしたりデジタル化を進めるための予算をつけたりするなど、できることを確実に進めていくべきだろう。政治家の「ムダ・ムリ・ムラ」の横行による厚労官僚の浪費も避けなければならない。そのチェック機能を果たすのは、国民をおいてほかにない。

 今回の緊急提言では、2020年度までに主な内容についての実施を目指しているという。それを後押しするのは、結局、国民一人ひとりの力であって、10年後も同じような提言がなされることのないよう努める必要がある。

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