人選にうかがえる安倍政権の厚労省冷遇ぶり

 実際、昨年末に政府がまとめた消費税増税対策や社会保障政策などの重要政策の骨格づくりは未来投資会議が主導。それまで司令塔だった経済財政諮問会議に代わって首相官邸の意向を反映する場となった。その舞台回しを務めるのは経産省だ。

 また、検討会議の仕切り役を担う西村康稔経済再生担当相兼全世代型社会保障改革担当相は元通産官僚。そのせいか、「社会保障の充実には経済成長が第一」という成長戦略論者で、経済成長すれば社会保障にも余裕が出る、だからこそ社会保障の充実のためには成長が必要で、潜在成長率を引き上げていくことの重要性を説く。

 現在、安倍首相の意向もあって、ヘルスケア分野は政府の成長戦略の重要な柱の一つとして市場や雇用の創出が見込まれる分野と位置づけられている。予防・健康管理が重点化されており、その産業振興を担うのも経産省。予防・健康管理を徹底すれば医療費の抑制につながり、公的保険制度も維持できる。そのためヘルスケア産業の振興が欠かせないというのが同省のロジックだ。

 そんな経産省の発想を、厚生労働省内では「株式会社の医療参入や混合診療の解禁につながり公的保険制度を壊しかねない」と苦々しく受け止め、否定的にとらえる向きが多い。ところが、昨年6月に驚きの人事が起きて以降、経産省の主張に表立って意を唱える幹部はいなくなった。その人事とは、安倍政権が「医療の産業化」にまい進することになった仕掛け人ともされる、経産省の江崎禎英・政策統括調整官が厚労省医政局の幹部ポストを兼任したこと。当時の加藤勝信厚労相に「厚労省に化学反応を起こすことができる人物」と見込まれての任命だった。その後、加藤氏は自民党の政調会長の座に就くが、今回の内閣改造で厚労相として再登板を果たしたところ。加藤厚労相も経産省寄りの発想の持ち主なのだから、経産カラーはおのずと強くなる。

 今回の検討会議の民間議員で、医療保険制度や医療提供体制を熟知して、それらの見直しにより医療現場にどれだけの影響が出ることになるかを詳しく語れるのは、恐らく遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所長のみ。厚労相の諮問機関である社会保障審議会のメンバーだが、社保審から選出されたのは遠藤氏だけで、安倍政権の厚労省冷遇ぶりがうかがえる。