オンライン診療を巡る議論がかまびすしい。発端は、菅義偉首相が政権発足当日に田村憲久厚生労働相に「オンライン診療の恒久化」を指示したことだ。

 厚労省の指針では、オンライン診療は通常、慢性疾患などで定期的に受診している患者に限って利用可能で、「初診は対面診療」が原則。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年4月に受診歴のないすべての疾患の初診の患者も含めたオンライン診療が特例として全面解禁された。期限は感染が収束するまで。ところが、首相はその見直しを求めたわけだ。

 実際、恒久化へのシナリオは進みつつある。首相の意向を受けて、10月8日には、田村厚労相が、河野太郎行政・規制改革担当相や平井卓也デジタル改革担当相と会談し、原則恒久化の方針で一致。その後、政府の規制改革推進会議で、オンライン診療は優先的に審議する事項に位置付けられ、今月21日から作業部会でオンライン診療の普及に向けた議論が始まっている。

 こうした状況に厚労省や日本医師会(日医)は従来と変わらず、慎重な姿勢を崩していない。オンライン診療をめぐり、厚労省はもともと医師が患者を十分診察せずに薬を処方するような不適切なケースを懸念。そのため入り口を狭める事前規制を行ってきたところ。一方、日医は、オンラインは問診と視診に限られ、その場での検査や触診といった対面診療ならではの情報が得られないことから、とくに初診では誤診のリスクが高まるなどとして、根強く反発してきた経緯がある。それゆえ、どちらも性急な規制緩和においそれとは乗れないのだ。

 厚労省では今後「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」において、特例での検証結果を踏まえた上で、安全性を確認しながら対象などを改めて整理する考えを表明。日医は会長の中川俊男氏が9月24日の定例記者会見で「医療機関へのアクセスが制限されている場合にオンライン診療で補完する」「初診からのオンライン診療は有事における緊急の対応だ」と述べるなど、政府をけん制する発言が目立つ。