すぐにでも取り組める企業との連携

 もっとも、医療費の膨張で保険財政が厳しさを増していることを踏まえれば、口腔健康管理への一層の保険適用の拡大がそう簡単に進むとは考えにくい。

 そこで打つべき手としては、予防に係るサービスについての市町村の保健事業として、口腔健康管理を軸とした歯科健診を充実化してもらうという方法が考えられる。

 現在、法律で義務化されている歯科健診は乳幼児健診と学校健診の二つだけ。高校生を最後に歯科健診の受診義務はなくなり、その後は健康保険法や健康増進法、高齢者医療確保法などにおいて歯科健診の実施はあくまで努力義務とされるにとどまる。

 市町村によっては補助金を交付して歯科健診を充実させているところもあるものの、その取り組みにはバラツキがみられる。また義務化ではないため、いわゆるメタボ健診のように、義務化かつ受診率が低い場合は保険者にペナルティ的措置が課される事業と違って、受診率が低迷していてもそのままというところも少なくない。

 そうした事情を考慮すれば、ライフステージに応じた切れ目ない歯科健診の法制化に向けた働きかけが日歯には欠かせない。

 さらに言えば、より手を付けやすい対応策として、歯周病リスクが高まる働き盛りの世代に向けて企業の協力を仰ぐという方法が挙げられる。社会人になって働くようになった場合、雇用する事業者側には、労働者が健康で働けるよう、健康診断を実施することが労働安全衛生法で義務付けられているものの、その健診項目に歯科は含まれていない。ただし、独自に会社の補助事業として、企業健診の中に歯科健診も組み込んだり、地域の歯科医院での歯科健診の受診を無料化したりすることは、やろうと思えばもちろんできるし、他にも事業所内で従業員へ口腔健康管理に関する教育・啓発を行う取り組みは企業として比較的に容易に進められる。

 日本では企業のトップや会社がそうした施策を宣言し、意欲を持って進めると実効性が高まるもの。それはここ数年来、関心が高まる企業の健康経営の実践を見ても明らかだろう。

 実際、口腔健康管理に活路を見いだす日歯は今後どのような対策を取っていくのか。注意深く見守りたい。


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