財務省としては到底許されない話

 もっとも、若手議員の提言が官邸に重用されるのはそれなりの意味があってのこと。明るい社会保障改革研究会の場合、顧問は当時、経済産業大臣だった世耕弘成氏と自民党総務会長だった加藤勝信氏。いずれも安倍首相の側近中の側近だ。さらに、健康寿命の延伸を目指す安倍政権にとって予防・健康づくりはイチ押しの施策。社会保障改革というとこれまでは負担増や給付減の議論に終始し、その都度、医療関係団体などから猛反発を受けて改革がなかなか前に進まない歴史を続けてきた。そんな隘路にはまらないよう、同研究会では民間の力も最大限に活用しながら第3の道を進むべきことを提言しており、首相にとってはすぐにでも飛びつきたくなる内容だったわけだ。

 こうして確かな足跡を残した明るい社会保障改革研究会。このたび議連に「格上げ」したのは、若手だけでなく中堅・ベテラン議員にも参加者を広げ、発信力を強めるために他ならない。

 さて、ここで興味深いのは、議連の顧問の座には引き続き世耕氏と加藤氏が就いたことだ。世耕氏は現在、自民党の参議院幹事長だが、加藤氏は厚生労働大臣である。現職厚労大臣が、首相が頼りとする明るい社会保障改革の推進に力を注ぐのだから、今後の医療・介護行政の方向性は推して知るべしだろう。

 議連の発足がこの時期になった点にも注目したい。これから年末にかけて政府の2020年度当初予算の編成作業が本格化する。だからこそ研究会から議連に格上げして、自分たちの提言内容が確実に実行に移されるよう、予防・健康づくりの予算をしっかり確保していこうとする意図が十分見て取れる。

 この議連の発足に内心穏やかならないのは財務省だろう。国の厳しい財政事情の中、財務省が目指すはもちろん歳出削減。そもそも、予防による医療費や介護費の抑制効果は定量的に明らかではなく、研究者の間でも意見が分かれている(関連記事)。にもかかわらず、予防・健康づくりに財源を確保することなど、財務省としては到底許されない話なのだ。

 議連発足の6日前の11月1日には、国の財政問題を話し合う財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会が開かれたが、そこで財務省は増え続ける医療費を抑制するための方策をずらりと並べた。医師の技術料など診療報酬の「本体」部分の引き下げや、新たに75歳になる人からの自己負担率2割への引き上げ、さらに外来受診時に少額の定額負担を導入する案も明記した。

 このうち一体どれだけの施策が実現されるのか。現職の厚労大臣がいる議連の発言力・発信力を前に、財務省が今後どう立ち回って、結果がどうなるのかを注視したい。

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