介護職の離職要因のトップを占めるのは?

 厚労省はこの「介護のしごと魅力発信等事業」を来年度も継続する方向で、2020年度の概算要求では今年度予算からさらに3億円ほど上積みして、8.9億円を計上した。相当な力の入れようであることがうかがえる。

 ここまで予算をつぎ込むなら、当然、効果の検証も必要だろう。厚労省は「事業をやりっ放しで終わらせることは決してない」(社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室)と明言するが、その言葉通りとなるかは、注意深く見ておくことが欠かせない。

 介護の魅力を強力発信して、イメージを刷新する。そのコンセプト自体を筆者は否定しないし、そもそも介護現場へのネガティブなレッテル貼りは早急になくなればいいと心の底から思っている。

 ただ、「介護はいいとこ、一度はおいで」とも呼ぶべきキャンペーンを熱心に進めるのはいいが、肝心の介護現場自体が本気になって働きやすい職場づくりに取り組んでいなければ、全ては無駄に終わってしまう可能性が十分ある。どんなに美辞麗句を並べても、職場を見られた瞬間に見抜かれてしまうものだからだ。

 よく誤解されがちだが、介護職の離職要因のトップを占めるのは「賃金」(収入の少なさ)ではない。公益財団法人介護労働安定センターの『平成29年度 介護労働実態調査』によれば、介護関係の仕事を辞めた理由で最も多かったものは「職場の人間関係に問題があったため」で20.0%、次いで「結婚・出産・妊娠・育児のため」が18.3%、「職場の理念や運営のあり方に不満があったため」が17.8%の順。「収入が少なかったため」は15.0%で6番目だった。多くの人は人間関係と職場の運営体制に不満や悩みを抱えている。

 どうしてそんな事態になってしまっているのか。理由は様々だ。例えば人間関係で言えば、介護現場には老若男女を問わず、いろいろな背景を持った人が集まっている。年下の上司もいれば、年上の部下もいる。また、持っている資格により、待遇などが違うほか、キャリアによって担当する仕事に違いが出てくる。そんなことから不公平感が生まれたり、ねたみやそねみを引き起こしやすい。

 とはいえ、そうした問題点を改善することは決して不可能ではない。派閥があれば解体する。各部署に職員の悩みや相談に応じられれるリーダーを置く。各人の業務の割り出しを行って、役割に応じて負荷を均等化する。実際、そんな取り組み行って、長く働きたいと感じられる職場にして、人材不足とは無縁の介護事業者も少なからず存在する。

 厚労省の介護の魅力発信事業が奏功して介護業界に人が集まっても、定着しなければ人手不足の解消はなし。その意味で、介護現場が果たすべき役割はあまりに大きい。

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