すんなりとはいかなかった介護保険適用

 とはいえ、介護保険の適用がすんなりと進んだわけではない。介護保険でカバーする福祉用具の範囲にはルールがある。介護保険法では福祉用具を「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの」と規定する。

 ただし、この定義の解釈の仕方によっては、福祉用具には極めて広範囲のものが含まれる可能性がある。そこで、(1)要介護者などの自立促進または介助者の負担軽減を図るものか、(2)介護のために新たな価値付けを有するものか、(3)治療用など医療の観点から使用するものか、(4)ある程度の経済的負担感があるものか──などの点を判断要素として選定することになっている。

 こうした判断要素に基づき、現在までに車いすや特殊寝台、手すり、床ずれ防止用具など13種目が福祉用具のレンタル対象に、腰かけ便座や入浴補助用具など5品目が販売対象になっている。

 だが、テクノロジーの進歩などにより、要件の範囲に当てはまらない多様な福祉用具が開発されてきた。そこで厚労省は、検討会での議論も踏まえ、福祉用具の範囲について「有効性」「安全性」「保険適用の合理性」なども含め総合的に勘案して判断することにした。

 デジタル技術を活用した今回の排泄予測支援機器は、そんな新たな観点を踏まえての評価の対象だった。だが、今年3月の検討会の議論では、効果を客観的に示すデータが乏しいとして、介護保険の適用は時期尚早とみなされ、引き続き検討することになった。ちなみに、この時の会合で介護保険の福祉用具貸与・販売品目として開発メーカーから提案のあった24件のうち、介護保険の適用となったのはゼロ。継続して検討に値すると評価されたのは、排泄予測支援機器を含む5件のみだった。

 その後、排泄予測支援機器の開発メーカーが追加データをそろえることで、厚労省が対象品目として認める総合的評価案を提示し、冒頭に触れた11月19日の検討会で了承された。

 介護現場におけるテクノロジーの実装に向け、国は2015年度から、介護施設が介護ロボットを導入した場合に補助金を出す仕組みを整備。介護保険制度下でも、2018年度介護報酬改定で、介護施設に見守り機器を導入して効果的な介護を行う場合に算定できる加算の施設基準を緩和し、続く2021年度改定ではさらに評価を拡充した。そしてここへ来て、介護保険でカバーする福祉用具の範囲も見直したわけである。

 厚労省の取り組みとしては珍しくスピード感があると筆者は感じている。その意味で画期的だ。それもこれも介護の問題を重く受け止めてのことなのだろう。

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