「外から見て複雑過ぎて分かりにくいとか意味が分からないとかの意見を頂戴したが、我々としては議論を重ね精緻な制度を作ってきた自負がある。その点はぜひご理解いただきたい」──。

 12月4日に東京大学構内で開かれた「2019年度医療技術評価国際シンポジウム」。午後のセッションに登場した厚生労働省大臣官房審議官の迫井正深氏は、他のパネリストたちの発言を受けてこう口にした。言葉遣いこそ丁寧だったが、そこには批判は到底受けられないと断じる響きがあった。

 この日のシンポジウムは「医療技術評価の制度化──その論点と今後の方向性」をテーマに行われた。医療技術評価(Health Technology Assessment:HTA)とは、文字通り医療技術を評価することで、費用対効果や患者のQOL(生活の質)などを勘案し、新薬や治療技術の「価値」を考える手法を指す(関連記事)。日本では、医療技術評価の一環として、医薬品と医療機器を対象に費用対効果を評価する新制度が今年4月にスタートした。

 医療技術評価自体は海外が先行しており、1990年代初めに費用対効果評価をいち早く取り入れ始めたのは、国内に大きな製薬企業がないオーストラリアやカナダ。そして、英国が99年に国立医療技術評価機構(NICE)を設立して費用対効果を本格的に検証すると、欧州各国が追随した。

 一方、日本はと言えば、厚労省が中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の下に専門部会を設置して、費用対効果評価の議論を始めたのは2012年。その後、2016年4月に試行が始まり、今年度が本格導入元年となった。世界の潮流から乗り遅れた上、検討から実施にこぎ着けるまでに計7年もの準備期間を要したことになる。

12月4日に東京大学構内で開かれた「2019年度医療技術評価国際シンポジウム」(写真:Beyond Health)

 ようやく制度化された中、その意義や残された課題などについて話し合おうというのが、今回のシンポジウムの趣旨で、東京大学公共政策大学院「医療政策・技術評価」研究プロジェクトが企画した。まず午前のセッションでは、海外から招いた2人の専門家が、英国をはじめとする海外の医療技術評価の最新事情を披露。そして午後のセッションでは、厚労省の見解を迫井氏が解説し、財務省側の主張を踏まえた見解を法政大学経済学部教授(公共経済学)の小黒一正氏が解説した後に、各登壇者によるパネルディスカッションが行われた。

 そのディスカッション時に、海外の専門家二人から、日本の制度に対する酷評ともいえる発言が飛び出したことで、冒頭に紹介した迫井氏のコメントにつながったわけである。