近年、厚生労働省が取り組んでいる、医療、介護のビッグデータを連結させて活用する「データヘルス改革」が新たな段階を迎えようとしている。2019年5月に成立した健康保険法等の一部を改正する法律では、国が保有する「レセプト情報・特定健診情報等データベース」(NDB)、「介護保険総合データベース」(介護DB)、「DPCデータベース」(DPCDB)といった三つの公的データベースを連結して、研究者や民間・保険者などの第三者がデータ解析できるよう規定を整備した。施行は2020年10月からで、先行したNDBと介護DBに続き、2022年4月にはDPCDBも合わせた連結解析が可能になる。

 2020年6月時点で、NDBには、2009年度以降分の全国の医療機関における診療報酬請求(レセプト)情報193億件と、2008年度から始まった厚労省の特定健診・保健指導のデータ2.9億件、介護DBには、2009年度以降の要介護認定情報6000万件と2012年度以降の介護保険レセプト情報10.9億件が格納されている。

 レセプトに示されているのは、患者・利用者に対して1カ月に行われた医療や介護の個別メニューと各費用。医療ならどんな薬が何日分処方されたのか、どういう手術・処置が行われたかはわかるが、正確な傷病名や重症度、各診療行為の実施日など細かな臨床情報までは把握できない。

 一方、新たに連結されるDPCDBには、非常に詳細で緻密な患者情報が集積されている。DPCデータは、日本独自の入院医療費が1日当たり定額払いとなる「DPC制度」で用いられているもので、データベースにはDPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づいた患者の臨床情報と、なされた診療行為のデータが網羅されている。そこには入退院経路や退院時転帰、各種臨床スコア、手術・投薬・処置の実施日なども含まれている。

 DPCデータの提出対象は、届け出をした病院の入院医療のみだが、2020年11月現在、全国に約89万床ある一般病床のうち実に81.2万床(91.5%)がデータを提出している。

データは活用されてこそ意味がある

 さて来年4月からこれら三つのデータベースの連結により、次のような分析も可能になるかもしれない。例えば、特定健診項目で引っかかった人が、後日、入院することになり、重症度判断の結果、こんな治療・処置を受けた。そして、その予後がどうなって、それからわずか数年後には介護の介入を受けたといった具合だ。

 なお、介護DBには、厚労省が今年4月に始めた介護保険の新たなデータベースである科学的介護情報システム「LIFE」(関連記事)で集めた情報も来年度以降加わる見込み。そうすれば、上記の例では介護の介入の結果、それを受けた利用者の状態がどうなったかまで追える。

 これら三つのデータベースについて、さる厚労官僚は「日本が誇る、世界に類を見ない医療・介護のビッグデータ」と胸を張る。確かに、網羅性があってきめ細かな情報が集積できている。「それもこれも国民皆保険制度のなせる業」(同上)だという。

 ただ、データは実際に活用されてこそ意味がある。三つのビッグデータを一体にすれば、医療と介護の総費用をもとにした最適な医療・介護の提供体制のあり方などについて研究できるようになる。それを先陣切って徹底的に行うべきは、ほかならぬ厚労省だろう。そして解析結果を政策や制度の見直しにつなげていく。

 それを実際どこまでできるのか。データという武器があっても、声の大きな医療関係団体などの勢いに押され、改革が一向に進まずじまいという未来は見たくない。

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