診療側に用意された“お土産”

 この改定内容は一見すると、診療側委員の主張が一向に取り合われなかった印象がある。

 医療を巡っては、他にも大きな見直しがあった。75歳以上の医療費窓口負担について、これまた菅首相の強い意向で、2022年度後半から単身世帯で年収200万円以上の人を現行の1割から2割に引き上げる方針が決定した。新型コロナウイルスの影響による高齢者の受診控えが指摘される中、日医など医療関係団体は対象範囲をできる限り絞るよう政府に要請。加えて、公明党をはじめ与党内からも引き上げへの慎重論が出ていたものの、首相は自らの意思を変えることなく、一定の「痛み」を強いる見直しを断行した。

 上記二つの見直しを見る限り、自ら主導した施策や持論は決して譲らずに実践に移す首相の姿が鮮明になるわけだが、その裏では診療側にとっておきの“お土産”も用意されていた。

 あまり取り沙汰されていないが、2021年度薬価改定が平均乖離率5%以上の医薬品を対象とすることが決まった大臣折衝の場では、新型コロナウイルス感染症に対する予防策を講じている医療機関に対し、臨時の診療報酬点数を設ける措置も決定したところ。来年4月から9月末までの半年間の期間限定措置ながら、すべての患者を対象に、医科と歯科の初診・再診について1回当たり5点(1点=10円)、入院で1日当たり10点の上乗せを認め、調剤でも1回当たり4点、訪問介護には1回当たり50円を加算できるようになった。

 さらに、コロナ対応での臨時報酬はそれだけにとどまらない。その二日前に行われた大臣折衝では、「外来における6歳未満の乳幼児への外来診療等に係る評価」として、「新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援」に関する上乗せ加算が認められた。前者については、通常の乳幼児加算に上乗せで医科100点、歯科55点、調剤12点を特例的に算定できることとなり、後者については新型コロナウイルス感染症から回復した後も引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関の入院診療を評価している「二類感染症患者入院診療加算」の点数を、現行の250点から3倍の750点への増点が認められた。これらの見直しは、既に12月15日から適用されており、このうち6歳未満の乳幼児への外来診療にかかる措置については、来年10月以降は、加算点数を医科50点、歯科28点、調剤6点とする。

 2020年4月以降、厚労省は新型コロナ対策として数々の診療報酬上の対応を実施してきたが、今まではもっぱら新型コロナ患者対応に関わるものであった。それがここへ来て、新型コロナ感染の有無に関わらないものも広く含めたことになる。中でも特筆すべきは、初再診やすべての種別の入院料などへの加算を認めた点。この上乗せは、実質的にほぼすべての医療機関・薬局で算定できることから、あまねく施設が恩恵を受けられる。