首相は日医に押し込まれたのか、それとも実を取った!?

 今回の薬価毎年改定や75歳以上医療費窓口負担引き上げの裏で医療機関に対する配慮ながされていたことに関し、取材を進めると、それが菅首相の政治的判断によるものだったことは間違いなさそうだ。

 なお、今回、大臣折衝で決まった診療報酬の特例引き上げを巡っては、実はかなり異例の対応でもある。個別具体的な点数項目の細部を詰めるのは中医協の場であり、何の点数をどれだけ上げ下げするかは、中医協委員の合意形成に沿って決定されるもの。だが、今回は臨時の診療報酬点数が中医協を通さない水面下の調整のみで決まった。官邸主導での診療報酬改定が実現したことの意義は大きいのだが、その点についてはまた機会を改めて紹介したい。

 話を元に戻せば、今回の一連の結果をどうとらえるかは、政府関係者や厚労官僚の間で意見が分かれている。首相が日医に押し込まれたとみるむきもあれば、いや、首相はしたたかで、しっかり実を取ったとみるむきもある。

 毎年薬価改定の実現に当たっては、薬価の引き下げ財源が診療報酬本体に振り向けられるようであれば、日医としては反発する理由はなくなる。その意味で、今回の薬価改定では、セットで全患者を対象にした診療報酬の特例引き上げが認められており、結果的には、薬価の引き下げ財源が一定程度診療報酬本体に充填されたため、日医の主張が通ったととらえられる。

 ただし、この特例として診療報酬の対応は現在のところ、あくまで来年4月から9月末までの期間限定の措置に過ぎない。厚労省によると、同10月以降については、「延長しないことを基本の想定としつつ、感染状況や地域医療の実態等を踏まえ、年度前半の措置を単純延長することを含め、必要に応じ柔軟に対応する」方針とのこと。6カ月で打ち切られる可能性は十分あって、そうなると医療現場への恩恵も限られる。それと引き換えに薬価の中間年改定を幅広で日医に飲ませたことは、首相の作戦勝ちで、次回以降の中間年改定では薬価引き下げ分をすべて国庫に入れられるはず。そんなとらえかたもできるのだ。

 ともあれ、首相の今回の手腕ぶりによる成果・結果は、時の経過とともにおのずと明らかになるのだろう。

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