発見困難な膵臓がんの早期発見に切り札となるか

 一般発表に続く特別講演では、膵臓がんについての知見や新たな取り組みが報告された。

 膵臓がんは現在でも早期発見が困難で、多くが進行がんとして見つかる。がんと診断されてからの5年生存率は男性で7.9%、女性で7.5%と、他の部位に比べて群を抜いて低い(2006-2008年の診断例:国立がん研究センターのがん登録・統計)。部位別の死亡数も、肺、大腸、胃に次ぐ第4位と多い。このため、早期発見を可能にする検査手法が強く求められている。

大阪大学大学院消化器外科学准教授の江口英利氏

 大阪大学大学院消化器外科学准教授の江口英利氏は、現在、文部科学省の研究費を得て実施されている初期膵臓がんの解析の試みについて報告した。研究は、最も初期(ステージIA:リンパ節転移なし、腫瘍が膵臓内に留まり、直径2cm以下)のがん検体を全国から収集、得られた検体に対して、ゲノムやマイクロRNAを含むオミックス解析(遺伝子など多様なデータを集積して解析する生物学の研究領域)が試みられ、早期発見の手がかりを探索しているという。

 その中で線虫による検査の有用性も検討されている。江口氏らは、研究で得られた初期膵臓がん患者11症例の術前・術後の検体に、ダミーとして健常者の検体を混ぜた計50症例分をHIROTSUバイオサイエンスに送り、N-NOSEを用いて検査した。その結果、11症例のうち7症例が陽性となり、術後には陽性となった7症例中6症例で誘引走性(がん患者の尿を好み、近づく程度)が低下していた。

埼玉医科大学国際医療センター消化器内科の良沢昭銘氏

 また、埼玉医科大学国際医療センター消化器内科の良沢昭銘氏は、膵臓が身体のほぼ中央に位置するため、腹部エコーなどの画像診断や組織を採取する生検が難しいことを指摘、診断や治療の手段として、超音波内視鏡(EUS)の有用性が高いことを紹介した。EUSは内視鏡の先端から超音波を発振して周囲の臓器を撮像するデバイスで、胃から十二指腸にかけて挿入することで、膵臓を鮮明に撮像できる。さらに超音波で撮像しながら膵臓の生検や放射線源の埋め込みを行うこともできるという。

 良沢氏は、自院の膵臓がん患者を対象としたN-NOSE検査の臨床試験の中間結果を報告した。膵臓がん患者59例と対照群53例の計112例に対してN-NOSE検査を行う臨床試験を実施したところ、感度94.9%、特異度84.9%と高い精度が得られた。「今後、症例数を増やした場合にも安定して同様の精度が得られるなら臨床応用が可能だ」(良沢氏)という。

 良沢氏は、「EUSは膵臓がんの診断・治療に高い可能性を秘めており、初期膵臓がんの段階でEUSを適用するには、N-NOSEによる“拾い上げ”が有用だ」と期待を見せていた。