線虫の遺伝子改変で感度向上やがん種別の識別も可能に

 研究会では、HIROTSUバイオサイエンスの魚住隆行氏から、N-NOSEの改良の試みについても報告された。

HIROTSUバイオサイエンスの魚住隆行氏

 魚住氏らが嗅覚に関連した遺伝子が変化した様々な変異型の線虫を調べたところ、ある変異型では、好みの匂いに誘引される反応と、嫌いな匂いを避ける反応とが共に強く、匂いに対する感度が高かった。こうした変異型を用いることで、より鋭敏な検査ができるようになる可能性がある。

 また、がんの種類を識別する検査法の開発も進められているという。がんは種類ごとに匂いが異なる可能性があり、匂いが異なれば識別するセンサーに相当する嗅覚受容体の種類も異なる。

 遺伝子操作によって、特定の嗅覚受容体だけをオフにできるので、例えば、胃がんに反応する嗅覚受容体をあらかじめ突き止めておけば、通常の線虫による検査で陽性になった患者が、胃がんの匂いに対応した受容体の働きを止めた変異型の線虫による検査で陰性になれば、胃がんの可能性が高いことが分かる。

 魚住氏らは、多数の受容体遺伝子に対する解析を進めており、特定の受容体が働かない変異を持った線虫を作製している。すでに、肺がんや乳がんの検体に対し、尿に近づいていく動作(誘引走性)を行わない個体が得られているという。

 苦痛が少なく、低コストで受診でき、高い精度で早期がんを発見できる検査法の実用化がようやく第一歩を踏み出した。線虫から出発した生物診断研究の発展に期待したい。

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