バイオ領域にも求められる「情報の分かりやすさ」

 Xcoo代表取締役の西村邦裕氏は、かつて工学系の研究職に就いていたことがあり、専門は「ユーザーエクスペリエンス(UX)」の領域だった。「バーチャルリアリティー」や「ヒューマンインターフェイス」といった分野の技術を使って、製品やサービスの使用体験をより良くするものだ。

 転機は、2005年に東京大学の中で行われた起業家育成を目的としたプログラムに参加して、生物学分野の研究者と接点を持ったこと。ゲノム研究について知る中で、遺伝子の分野にも「情報を分かりやすく提示する」UXの発想が必要になるという思いを強くした。そこからゲノム分野での起業へと動くことになる。医学分野の中では異色の経歴といえるかもしれない。

 Xcooは2011年4月の創業から、がんの遺伝子検査の広がりとともに発展した会社である。東京大学が進めている、がんの遺伝子パネル検査「Todai OncoPanel」のデータ解析を担うのは事業の柱の一つ。この遺伝子検査は、国が先端医療として例外的に混合診療を認める「先進医療B」の中で行われているものだ。さらにXcooは、東大のほかにも大学や医療機関へ「Chrovis(クロヴィス)」の名前で解析サービスを広げていこうとしている。

 西村氏は、「遺伝子検査で重要なのは、がん細胞の遺伝情報を読んだ後の“アノテーション”と呼ばれるプロセスだ。これは見つかった遺伝子の変異ががん治療にとってどんな意味があるのか解釈していくことである。私たちの会社ではそうした意味づけしていった結果に基づいてレポートを医師向け、患者向けの双方に作成するところまでをカバーしている」と説明する。

 DNAの数が30億などと聞いたことがある人の中には、不思議に思う人もいるのではないだろうか。新たに保険適用になった遺伝子検査は、中外製薬の提供する検査とシスメックスの検査があるが、調べられる遺伝子はそれぞれ325個、114個と決して多くはない(関連記事)。30億ものDNAを調べるのに、なぜ遺伝子検査で調べられる数が数百なのだろうかと。

 その答えは、「数はこれから増える」ということだ。