将来は食品への応用も視野に

 本蔵氏は、シーケンサーを誰にでも使えるようにしたいと考えている。「コンピューターもかつては冷蔵庫のような大きさで、研究者でなければ使えなかった。それはシーケンサーも同じ。パソコンのように使えるようになったらどうなるかを考えている」(本蔵氏)。ゲノムは生きているありとあらゆるものが持っている。医療をはじめ、腸内細菌も持っている。最近ではゲノム技術の食品への応用が米国では注目される。肉の味のする植物のような研究も進む。さらに、エピジェネティクスの領域も重要視されるようになっている。がん細胞ではエピジェネティクスの変化が次々と起こってくる。それを追っていくのはビジネスの観点からも大切だ。

 よく分かっていない領域だからこそやる価値は増大する可能性がある。新技術の登場により、全く新しい世界が広がることはよくある。

 実用化が待たれる電気によるシーケンサーだが、創業から6年間は研究開発を先行させる状態が続いた。投資企業などからの資金を受けながら苦闘の時期が続いているのも確か。クオンタムバイオシステムズは、社外からの投資を2014年に4億5000万円、2015年に24億円、2018年に890万ドル(日本円で約9億6000万円)受けてきた。外部資金が支えるが、どの会社でも必ず得られるものではなく、裏を返せば、それだけ期待も大きいということだろう。

 本蔵氏は、「ハイテクの企業経営陣から、スピード感をもってやる人が社内にいないと聞くことがよくある。知的財産を使い、新しい事業を立ち上げたり、戦略を構築して連携をしたりすることが多くの企業で求められていると感じる」という。形にするまでは、主導している当事者は苦しい時間を過ごさなければならない。成功が約束される新事業などない。それを知った上で、身を切る覚悟で道を拓くリーダーは必要だ。

 新しい世界を開くのは勇気がいる。それを後押しする会社の仕組みが作られていなければいけないし、新しい動きを社会も支えていけるか問われている。次回は、ゲノム分野のさらなる発展の鍵を握りそうな新テクノロジーに懸けるベンチャーを訪ねる。

(タイトル部のImage:ipopba / Design Cells -stock.adobe.com)