2つの技術で独自の地位を築く

 このゲノム編集を効率的に行うための技術を大阪大学の橋本昌和氏とともに開発し、基本的な技術特許を出願したのが、徳島大学の研究者であり代表取締役会長の竹本龍也氏。一方で、ビジネスとして前線で事業を引っ張っているのは代表取締役社長の竹澤慎一郎氏だ。

 今回は東京の拠点で活動する竹澤氏のもとを訪ねた。同氏はもともと科学分野の編集者であり、書籍の編集からゲノムの編集に活躍の場を移したという異色の経歴を持つ経営者である。とはいえ、竹澤氏ももともとは研究者であり、2016年に編集者として勤める会社の新規事業を考える中で、元同僚の研究者から徳島大学のゲノム編集についての情報を得て事業に加わったという経緯がある。

 ゲノム編集を事業にするまでに動きは速かった。前述の通り、従来にない強みを持つ効率的にゲノム編集を行える技術を開発したのが始まりだ。会長の竹本氏が2015年までに発明した「受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)」と呼ばれる技術のことである。同年に特許を出願。これはゲノム編集のスピードを圧倒的に高速化させる手法だった。

 ゲノム編集技術の中でも効率性の高い技術として知られるクリスパーキャス9を使ってDNAを変化させる場合、タンパク質などを受精卵に入れる必要がある。

 従来技術では、ガラス製の微小な管を細胞に挿入し、DNA塩基やタンパク質を含む溶液を注入する「マイクロインジェクション法」が一般的だ。これには高解像度の顕微鏡を使って、目視で操作する必要があり、受精卵1個1個に注入するには熟練の作業者の腕が欠かせない。しかも150個の処理であれば時間が2時間以上もかかった(図2)。

図2●従来法と受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)の比較

 受精卵エレクトロポレーション法とは、1mmの溝を電極で挟んで、その溝に受精卵を数十個並べることができ、通電することでタンパク質を一挙に入れることを可能とするものだ。セツロテックの電気を使った方法であれば、150個の受精卵の場合、15分以内にタンパク質を入れることが可能となる。自動化可能で誰にでもできる上に、百発百中でタンパク質を入れられるのは大きなメリットだ。

 これをゲノム編集に応用することで世界的にも強みのある技術を確立することができるという見通しが立った。こうした2つの技術を組み合わせることで、ゲノム編集だけではなし得ない独自の地位を築く道を切り拓いたことになる。