病気や事故などで損なわれた組織や機能を元に戻す再生医療。ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)をはじめ様々な技術が実用段階に入り、誰もが不可能だと思ったことを可能にする世界がすぐそこまで来ている。本特集では、ヒトの体のみならず、少子高齢化の進行で疲弊・崩壊する医療機能・インフラをも「再生」する革新的テクノロジーと企業を紹介していく。最初は、再生医療の領域の中でも期待の星として筆頭に挙げられることが多いiPS細胞の実用化の動きから。iPS細胞の力で、少子高齢化に伴う献血不足により危機に直面している日本の輸血医療を救おうとするベンチャー企業を訪れた。

 これまで人類は、病気や事故などによってある臓器の機能が失われても、何らかの形でそれを補う治療法を開発し、延命を図ってきた。

 例えば、膵臓の機能が落ちると糖尿病になってしまうことがあるが、そのときにはインスリンと呼ばれるホルモンの不足を注射で補う。また、腎臓の機能が失われると、血液に老廃物が蓄積し、尿毒症をはじめとする様々な病気を招いてしまう。そこで、血液透析という方法により腎臓の機能を肩代わりしたり、他人の腎臓を移植して失われた機能を取り戻すといった治療が行われる。

 ただ、そうした治療があらゆる分野でできるかといえば限界もある。そんな状況に光明を照らしたのが「iPS細胞」だ。2007年の京都大学教授の山中伸弥氏らによるヒトiPS細胞の樹立は、それまでの常識を塗り替えるものだった。iPS細胞とは、いったん皮膚などに分化した細胞を初期化して、もう一度、受精卵のようにどんな細胞にでも分化するようになる細胞だ。例えるなら、細胞における「タイムマシーン」を可能にして、過去に遡れるようにしたわけだ。

 iPS細胞は臓器移植のように、欠けた組織や機能を埋め合わせる治療手段になり得る。既に脳神経や心臓、血液の難病など従来薬がなかったり臓器ドナーがいない領域で、それらの機能を取り戻すための応用が進もうとしている。細胞や組織を一部補充するばかりではなく、臓器全体を再生させようという試みも始まっている。

 そんな中で、「血小板」と呼ばれる血液の中の成分をiPS細胞で作り出す研究開発が実用化に大きく近づこうとしている事実は、意外と知られていないかもしれない。

 iPS細胞由来血小板製剤の開発を引っ張るのが、2011年創業のベンチャー、メガカリオン(京都市下京区)だ。その代表取締役社長である三輪玄二郎氏に、iPS細胞由来の血小板が持つインパクトとその技術を実現するための要諦について聞いた。