今後の治療効果の検証に注目

 もっとも日本の早期承認制度で新しい治療ができるようになっているのは間違いない。

 3月の日本再生医療学会総会では、札幌医科大学で進められてきた、まさに『ネイチャー』の批判の的になったステミラックの治療成績について、札幌医科大学整形外科教授の山下敏彦氏が、動画を示しながら説明していた。

 自己骨髄由来の間葉系幹細胞を、局部麻酔をかけて骨盤の骨の中から取る。この細胞を培養して、点滴バックに入れ、静脈から骨髄損傷を受けた患者に投与する。点滴自体は30分から1時間で終わる。

 会場で示された動画は、治験に参加した13人の事例についてだったが、確かに再生医療の効果があるように見えた。頸髄損傷になった人で、体の動きがすっかり不自由になっていたにもかかわらず、点滴治療を受けた翌日から回復するのである。4カ月ほどで歩けるようになり、歩いて退院したという。

 頸髄損傷といえば、首から下が動かないような状態になり回復しないケースもあるが、少なくとも再生医療を受けた人たちは、そうした後遺症がなくなった。山下氏は、リハビリテーションにより治療の向上が見込まれる点を強調していた。

 こうした結果は、海外からの指摘を踏まえれば、あえて懐疑的に見ることもできる。再生医療をしなくても、回復は見られたのではないかというものだ。こうした見方を払拭するには、山下氏も説明していたが、再生メカニズムも含めて効果を証明する努力は欠かせない。

 ステミラックは、2019年2月に薬価収載され、1回の治療当たり1495万7755円と高額。注目されている最新医療の金額の高さが取り沙汰されるときには頻繁に引き合いに出されている。治療効果がないのだとすれば、『ネイチャー』で批判が掲載された通り、患者が無駄に費用負担したことになりかねない。

 新しい試みは批判なしには前に進めることができないが、情報はオープンに、説明は尽くしていくべきだ。もっとも批判にもよらず、日本以外の国にしても、日本で先行した早期承認制度に近い仕組みの検討は始まっている。光の部分も陰の部分も視野に入れつつ、確かな再生医療を築いていけるかどうか。再生医療の実力ばかりではなく、日本の実力も問われる。

 次回も引き続き、再生医療の最新動向について見ていく。


【参考文献】

Nature. 2015 Dec 10;528(7581):163-4. doi: 10.1038/528163b.

Nature. 2018 May;557(7707):611-2. doi: 10.1038/d41586-018-05284-w.

Nature. 2018 Sep;561(7724):455-7. doi: 10.1038/d41586-018-06756-9.

Nature. 2019 Jan;565(7741):535-6. doi: 10.1038/d41586-019-00332-5.

Nature. 2019 Jan;565(7741):544-5. doi: 10.1038/d41586-019-00178-x.

Nature. 2019 May;569(7754):40. doi: 10.1038/d41586-019-01364-7.

(タイトル部のImage:Sashkin / rost9 -stock.adobe.com)