欧米で実績、日本で勝負に出る

 この6月には、iPS細胞由来RPE細胞製品の共同開発パートナーである大日本住友製薬との開発体制を変更すると発表。2019年度中に開始を予定している企業治験を大日本住友製薬が主体的に行うなどヘリオスの寄与度を縮小する。iPS細胞は、免疫抑制の仕組みや、拒絶反応を起こさないようにする処理などの課題も多い。ヘリオスが、間葉系幹細胞製品に軸足を移したことを象徴する発表だ。

 さらに、7月には新株予約権付社債の発行による最大130億円の調達も発表。ニコンが40億円を引き受ける。資金増強を経てこれから勝負をかける。

 鍵本氏は「iPS細胞は大切であり、誰よりも理解している。一方で、iPS細胞についてはまだ先だとか、安全性は分からないなどとも言われることがある。否定も肯定もできる状態。私たちは臨床研究の結果を踏まえ、世界中の再生医療、細胞医療も見た上で、短期的に有望なのは間葉系幹細胞と考えた。これを一丁目一番地として黒字化をさせる。体にもともとある間葉系幹細胞は安全性が高く、低分子の医薬品のような失敗のリスクや予測しない副作用が少ない」と説明する。

 マルチステムを重視する背景には、欧米で既に成果が上がっていることがある。アサシスが米国と欧州でいずれについても先行して試験を実施中で、治療効果を確認。ヘリオスは、日本でも臨床試験に着手しており、効果の検証を進める。日本も欧米に続いていこうとしている。

 間葉系幹細胞の治療メカニズムは炎症を軽減するというもので特徴的だ。マルチステムにより、なぜこうした病気を治せるのかは、再生医療という言葉からは想像しづらいかもしれない。

 というのも、脳梗塞にせよ、急性呼吸窮迫症候群にせよ、脳や肺の細胞を単純に再生させるものではないからだ。炎症を押さえ込むのである。そのための幹細胞となる。脳梗塞では、腹部にある「脾臓」と呼ばれる、免疫を担う白血球などが集まる場所に幹細胞が定着する。ここで幹細胞は、炎症を促す物質を減らす。一方の急性呼吸窮迫症候群では肺に幹細胞が集まる。やはり炎症を鎮めるのが幹細胞だ。マルチステムを点滴によって静脈に注入してこれらの疾患の治療を行う。

 ヘリオスが実施している臨床試験は、脳梗塞については2020年中までに比較試験を行って治療効果を証明していく。マルチステム投与を受ける110人と、偽薬であるプラセボ投与を受ける110人を比べるのだ。ARDSも2021年までに同じように比較試験による治験を行う。日本では条件付き早期承認制度が走り始めているが、臨床試験で効果を確認する方がむしろ近道だと考えているようだ。海外から早期承認制度は拙速という批判もあるだけに、慎重なアプローチを取るのは賢明といえるのかもしれない。