効率を10倍に高める

 フルステムが保有している細胞を増やすための特許技術は、不織布と呼ばれる、使い捨ての「お手拭」にも使われるタイプの素材を細胞の足場として応用するものだ。不織布は、糸を織ったり編んだりせずに、繊維を機械などで押しつぶして作り出した布である(写真2)。

写真2●不織布

 細胞を培養する装置は、2本のボトルに培養液が満たされており、この中に不織布が浸された状態になっている。縦60cmで、横50cmの箱型で、実際に見ると思いのほか小さい。入り組んだ繊維の中に細胞を取り込み、そこで細胞を増やす。

 一般的に細胞の足場となる培養皿では、1人の再生医療で使うための1億個の細胞を作りだそうとすると、直径10cmの培養皿を250枚以上使い、最低6人で培養液の交換を繰り返す必要がある。それが不織布を足場にした仕組みを使うことで、効率を10倍に高められ、コストは4分の1に圧縮できる。対応するための人は1人だけいればいい。「従来法では一度に培養できる細胞数は1億個が限界だったが、不織布をつかった方法であれば10億個の細胞を培養できる」と千葉氏は説明する。

 さらに、細胞培養のためには、不織布を使わずに、培養液の中に浮いた状態で増やす方法もある。この場合も、細胞同士が触れて刺激を受けると、細胞が成長してしまう難点がある。不織布を活用することで、様々な細胞に分化する幹細胞のメリットを保てるのは重要だ。

 メリットは他にもある。培養皿を使うと、培養液を交換するときに菌などが混入してしまう可能性がある。外から遮断されて、全自動で培養できるフルステムの装置だと、感染が広がる恐れがなくなる。また、基本ソフトに、携帯電話に使われるアンドロイドを使うなど、初期投資を抑えている。さらに、通信機能も備えており、遠隔操作で状況をモニターすることも可能としている。