ポイントは「データ」

 医療とお金の問題をめぐって、これから医療の価値に関心の目が注がれるようになる。「説明責任として費用対効果は注目される」と五十嵐氏は言う。薬は承認される段階では、例えば、高血圧の薬では、血圧を下げられるかが重視される。一方で、本来は、その薬を飲むことで、QOLが上がったり、寿命が延びたりすることこそ重要だ。

 今後は、そうした医療の本当の価値を示す「真のエンドポイント」に通じるQOLや寿命にまつわるデータがより求められる可能性があると五十嵐氏はみる。そこから問われるのは医療の実力だ。

 繰り返しになるが、求められるのは、医療に関わるデータである。「財政への影響が大きな薬や目立つ薬について厳しい目が注がれる傾向が出てくるのではないか」と五十嵐氏はみる。今後は、データに基づいて、政策が作られる流れが強まるのではないかという。海外は先行して動きが活発だ。価値がないと見なされた医療は、保険から外されることもある。有名なのは、フランスで認知症の薬が保険適用から外された事例だ。「日本では、医療行為の多くが保険でカバーされている背景もあり、いきなり保険適用の除外までするのではなく、値決めに使うという流れになるのではないか」と五十嵐氏は説明する。

 注目されるのは、どのように医療の生み出す価値と値段が結びつけられるか。五十嵐氏は、「海外を見ると、費用対効果以外の部分をいかに組み入れるかが逆説的だが課題になってくる」と指摘する。英国の例では、ある薬の費用対効果を見たときに、保険の非適用が俎上に上ることがある。そうした場合には、薬の効果はゼロかイチか決まるわけではなく、交渉の中で落とし所を決めるような形になっている。そこでは、費用対効果以外の要素も踏まえ、保険適用から単純に外すのではなく、価格を安くするという結論になることも多い。また、将来データを出すことを約束させて、保険適用を認めるような考え方もあり得る。実際、CAR-Tのがん治療などではそうした考え方が取られている。値決めにおいて、どういったファクターに注目するかは重要になる。