テレワークで心配される親と子のメンタルヘルス

 子どもの健康でもう一つ危惧されるのはメンタルヘルスだ。いま全世代で自殺者が増加傾向にあり、なかでも若年層や女性の増加が目立つ。厚生労働省は関係機関と連携し、対策を強化する考えだ。いま子どもたちに何が起きているのだろうか。

 川上先生は「いつもと違う日常が子どもたちにとってはそもそもストレス」だと指摘する。

 小中高校は休校措置を経て学校再開となったものの、感染対策のために部活動の大会や合唱コンクール、遠足や修学旅行などのイベントの制限が続いている。例年ならば秋冬は卒業アルバム制作の時期だが、イベントがない上に普段からマスクを着用しているせいで、アルバム用の写真が満足にない状況だ。

 「子どもたちに正しくコロナを伝えて、正しく対応させることが大切なのですが、親御さんもこの状況を上手く説明できないのでは。子どもは教えられた通りに三密回避や手洗いなどを頑張っているのに部活も行事もできないし、お父さんやお母さんはコロナだから仕方ないと言うばかりで、これでは何を信じていいのか分からなくなってしまいます。子どもは大人よりもリスクが低いのですから、感染対策を行った上で、なるべくいつも通りの生活に戻してあげてほしい。家庭での日常もいつも通りを意識して、起床や食事の時間を一定にして規則正しい生活リズムを作ってあげること。それだけでも子どもの不安は和らぎます」(川上先生)

 また、コロナ禍でテレワークが浸透したが、働き方の変化は大人だけでなく、子どものメンタルヘルスにも影響を及ぼしている。例えば、在宅勤務で子どもの日常を目の当たりにした親が『もっと勉強しなさい』と叱ったり、仕事の妨げになるからと『静かにしなさい』『自分の部屋に行きなさい』と口うるさく言ったり、親のストレスがそのまま子どもに向けられるケースが少なくないようだ。なかには、テレワーク中の配偶者に配慮して、一日中子どもと公園で過ごしていたという家庭もあった。親も子も心をすり減らしている。

 「子どもは親がそばにいれば『遊んでほしい』『かまってほしい』と思うものですが、テレワークや家事で忙しく、要求のすべてに応えることが難しいときもありますよね。そういうときに『一人で遊んでいて』とタブレットやゲーム機を与えっぱなしにしていませんか。私はコロナ禍以前から、これには大反対なのです。子どもの情緒にどういった影響が出るのかは分からないし、動画やゲームに夢中になるあまり徹夜して寝不足になったり、学校を早退してまでゲームに興じたり、負の側面も明らかになっています。子どもがいつでもこれらに触れられる状況にあることが良くないので、大人が接触時間をコントロールしてあげてほしい」(川上先生)

 さらに、川上先生は「小さな子どもにはタブレットではなく、絵本の読み聞かせ」を提案する。

 「絵本ならば子どもが何に驚いたり喜んだりしているのか、反応を見ながら読み進められますよね。一歳児でもお気に入りの絵本だと『たんたん!』などのフレーズを言えることもあるので、親御さんは『すごい、読めたね!』と喜んであげてください。こういう幸せな時間を共に過ごすことが大事だと思うのです。子どもは成長すると具体的な絵本の内容などを忘れてしまうでしょうが、幸せな記憶は一生残るもの。それが今度は自分が親になったときの支えになりますから。ステイホームで家族と過ごす時間が増えた今こそ、親子の幸せな時間を増やしていってほしいと思っています」(川上先生)

かずえキッズクリニック院長 川上一恵先生

(タイトル部のImage:udra11 -stock.adobe.com)