「弱酸性」「ノンシリコン」「無添加」は本当に効果があるのか

 医療者によるアピアランスケアは以前から行われてきた。アンケート調査では「外見に関するアドバイスを誰にもらったか」との問いに、7割が「医療者」と回答。確かに診察の流れで外見について話すのは自然であり、ウィッグやメイクだけでなく、基礎化粧品やシャンプー、サプリメントなどに話題が及ぶこともある。

 しかし、医療者は医療の専門家であって、美容の専門家ではない。それでも患者の役に立てばと「メーカーの受け売りをそのまま話す人もいる」と、野澤氏は指摘する。

 「医療者にはきちんとした情報を発信してほしいので、巷に流れる『弱酸性が良い』『シリコンシャンプーはダメ』などの情報をひとつずつ精査した。その大半は十分な研究がなされておらず、メーカーに問い合わせても根拠不明のものもあった。結果的に、確かな科学的根拠を持つ情報はなかった」

ウィッグに不慣れな人に野澤氏が薦めているのがベレー帽。ベレー帽は、カフェなどの室内でも外さなくて良く、また、似合わないウィッグもベレー帽と合せると、急に顔に馴染んでバランスが取りやすくなるという。また、「治療後は元の髪が生えるから、いまだけのおしゃれを楽しみたい」と、金髪のウィッグを選ぶ人もいる。アピアランスの痛みもその受け止め方も人それぞれだ

 野澤氏はこれら研究成果をもとに、医療者向けの『がん患者に対するアピアランスケアの手引き』を発行した。アピアランスケアのための医療者教育はがん基本計画でも指摘される課題で、野澤氏への講演依頼も多い。国立がん研究センター中央病院が主催する拠点病院の医療者に限定した勉強会でも、募集開始からわずか10分で満席と、プラチナチケットになっている。

 「医療者にしかできないアピアランスケアがある。たとえば、がん治療で脱毛するのは全体の2割程度。脱毛ではなく、治療期間中だけ白髪になる人もいる。治療によって身体にどういった変化が起こり、それがいつまで続くのかを言えるのは現場の医療者だけ。一人ひとりの患者に合ったケアに努めてほしい」