ボトモールが当たり前の世界にするために

 「デザインやネーミングを工夫しても男性のスカート姿に違和感を抱く人はいる。私は毎日ボトモールを着用しているが、女装癖など心無い言葉をかけられることも。ただ、そこは見る側の慣れの問題だと思っている。周囲ではすでに私のボトモールが当たり前になっていて、たまにパンツスタイルだと『ちゃんとした格好をしてください』と言われる(笑)」

 スカートに対する人々の意識を変えていくために、日本障がい者ファッション協会では地域の首長に活動の意義を説き、実際にボトモールを身に着けてもらう活動を続けている(現在はコロナ禍のため活動は限定的)。最初に着用したのは福岡洋一大阪府茨木市長で、昨年末には吉村洋文大阪府知事にも着用してもらった。今は良くも悪くも男性のスカート姿にインパクトがあるため、首長のスカート姿はマスメディアでも写真付きで取り上げられ、市民の関心を集めることにつながっている。

世界を変えるには日本を、日本を変えるには地域を変えていかなければならないとの考えから、様々な地域の首長にボトモールを着用してもらい、その意義を伝えている(提供:日本障がい者ファッション協会)
世界を変えるには日本を、日本を変えるには地域を変えていかなければならないとの考えから、様々な地域の首長にボトモールを着用してもらい、その意義を伝えている(提供:日本障がい者ファッション協会)
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 今はまだ男性用スカートは流行っていない。流行らないからつくられない、つくられないから売っていない。売っていないから着る人が増えない。車いすユーザーがオシャレを楽しめる洋服が市場にないのもまったく同じ構図だ。しかし、市場には確実に必要としている人がいる。

 「要介護の高齢男性が孫のお祝いの席でフォーマルウエアを着たいと言ったが、車いす用のフォーマルが見つからない。一般的な男性用ジャケットは丈が長いので、座ったままだと裾がしわくちゃになってしまうのだ。そこで、ショート丈のジャケットをオーダーメイドでつくり、センタージップ式のボトモールと合わせた。最初につくったボトモールはウエストがマジックテープ式だったが、介護の現場から出た『着替えをサポートするにはジップで前開きできる方が良い』との声を反映した。晴れて男性はお祝いの席にオシャレをして参加でき、本人もご家族も喜んでいた」

 ボトモールは社会への問題提起としてつくったもので、当初は販売計画はなかった。しかし、平林氏のもとには商品化を期待する声が寄せられ、現在は「就労継続支援A型事業」に向けたプロジェクトを進めている。実現すれば、一般企業での就労が困難な障がい者に雇用の機会を提供できる。ボトモールの利用者が自ら、縫製やデザインなどを手掛けるイメージだ。しかも、自分たちが手掛けた製品がパリコレで紹介されたとなれば、プライドや自信も生まれるだろう。

 「今の社会では障害は劣っているものという意識がある。子どもの障がいを隠したい親もいれば、福祉にオシャレは不要とか男性のスカートはおかしいという人もいる。そういった諸々の偏見を丸ごとひっくり返したい。ボトモールはそのための戦闘服。最初からこれを全員が受け入れるとは思わないが、変だと感じる人が9割から8割、さらに7割と徐々に減ればいい。5割くらいまで減れば、世間の見方はかなり変わっているだろうし、それが世界を変えることだと思っている。いまの時代が抱える偏見は自分たちの世代で解決して、子どもたちには明るい未来を引き継ぎたい」

“車いすでランウェイ”を実現することで「障害や福祉に対する見方を変えたい」と平林氏
“車いすでランウェイ”を実現することで「障害や福祉に対する見方を変えたい」と平林氏
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(タイトル部のImage:udra11 -stock.adobe.com)