身だしなみを整えることで活力を得て、前向きになれる

 高齢者や障害者のヘアカット、そしてがん患者のアピアランスサポートと、ふくりびでは理美容の専門家としてさまざまなサービスを提供している。では、サービスを受けている人たちはどのように感じているのだろうか。また、彼らはなぜサービスを受けたいと思うのだろうか?

 「一つには本人の内面に良い影響があるから。身だしなみを整えることで活力を得て、前向きになれる。ひきこもりがちの高齢者もヘアカットが外出のきっかけになることがあり、この効果が大きいと思う。そしてもう一つは、ご家族と、介護施設職員や看護師などサポートする側にも良い影響があるから」(岩岡氏)

福祉理美容としてカットした人数は12万人以上。赤木氏は「このノウハウを生かし、誰もがその人らしく、美しく過ごせる社会を実現したい」と抱負を語る

 高齢者やがん患者をサポートする家族は常に「もっとできることがあるのではないか」という思いを抱えるものだという。がんが完治して社会復帰すれば、その思いは昇華し得るが、そうではなかったとき、思いは罪悪感として心に刻まれる。その十字架を背負い続ける家族はつらく、旅立った本人も心残りだろう。

 「20代の女性のがん患者さんが病院内で結婚式を挙げることに。担当の女性医師も看護師も職員も挙式を全面サポート。ふくりびはそのときのアップスタイルをお手伝いさせていただいた。病院前の公園で撮影した写真は本当にきれいだった。それから数カ月後に彼女は亡くなったが、担当医師の机には彼女の結婚式の写真が飾られている。明るい笑顔の写真が思い出と共に残ることで、周囲の人たちは今を前向きに生きる力を得られるのではないか」(岩岡氏)

 福祉理美容という言葉はまだ広く認知されているとは言い難い。しかし、人生100年時代、日本人の2人に1人はがんにかかり、高齢化率はまもなく30%を越えようとしている。いつ自分自身が、家族が福祉理美容のお世話になってもおかしくはない。最後に赤木氏は「理美容の専門家として、その人らしさを一生涯サポートしていけたら嬉しい」と語った。

アピアランスサポートの書籍を発行するなど、福祉理美容の普及に努めている

(タイトル部のImage:udra11 -stock.adobe.com)