青色や黒色のあざが現れる太田母斑や色素が抜けたようになる白斑、火傷や事故による外傷など、皮膚変色および皮膚障害に悩まされる人は少なくない。皮膚の厚みはわずか数ミリだが、外見に与える影響は大きい。そんな自分に自信が持てず内向的になったり、悪気はなくとも奇異な目を向けられたりして心に深い傷を負う人もいる。

 そんな悩みを抱える人々専用のメイクアップ製品がある。一般的な化粧品とはカバー力が格段に違い、気になる皮膚の色をキレイに隠すことができるという。自らも皮膚の変色に悩み、カバー効果の高いメイクアップ製品に助けられたという特定非営利活動法人メディカルメイクアップアソシエーション(MMA)事務局長の小井塚千加子氏と、銀座センターインストラクターの長尾陽子氏に、その活動内容を聞いた。


 まずは実際にメイクをしている写真を見てほしい。モデルはMMA事務局長の小井塚氏だ。

1)化粧水で肌を整えたら下地を塗り、カバーマークオリジナルファンデーションを全体に伸ばす。ファンデーションは数色を混ぜて、皮膚の色に合うように調合する、2)ファンデーションを母斑の部分に薄く何回か重ね、顔全体のバランスをとる、3)専用のパウダーをたっぷりと塗布してファンデーションを定着安定させる、4)3~5分おき、余分なパウダーを落とせばベースメイクの完成。母斑の存在をまったく感じさせない自然な仕上がり(写真:早川 マナ、以下同)

 小井塚氏は幼少期より顔の右半分にある青黒いあざに悩まされてきた。太田母斑だ。12歳のとき、大学病院に行って治療をしたいと相談したところ「痕が残る可能性があるので、メイクで隠す方がよいのでは」と医師から提案され、高校卒業時にメディカルメイクアップを始めた。

 「毎日毎日、母斑のことで思い悩んでいたが、メイクアップをすれば、そのことを忘れられて堂々と人前に出られるし、自分を表現することができるようになった」(小井塚氏)

血管腫に悩む女性が開発した製品がルーツ

 皮膚変色にはさまざまな種類がある。

 太田母斑は女性に多く発症し、出生時から現れるケースもあれば、思春期や妊娠などホルモンバランスが大きく変化する時期に顕在化することもある。また、盛り上がりのない薄茶色のあざが現れる扁平母斑も患者数が多く、発症率は10人に1人とされる。

 いまは医療技術が進歩し、症状によってはレーザー治療も可能だが、レーザーを照射するとゴムでパチンパチンと弾くような痛みが走る。しかも、一回でキレイになるわけではなく、完治までには時間も費用も要することから、治療を断念する人もいるという。

 皮膚の色が白く抜けたようになる白斑も患者数が多い。原因は皮膚の基底層にあるメラノサイトの減少あるいは消失。ステロイド治療などが有効な場合もあるが、先天性および後天性の難治性白斑・白皮症については難治性疾患に指定されている。

 また、毛細血管の局所異常で紅斑が生ずる単純性血管腫や、さまざまな臓器で炎症がおこる膠原病などのほか、火傷や事故による外傷も皮膚を変色させる。残念ながら、現代の医療ではすべて完治するわけではなく、あざや変色部位が目立たないように髪を伸ばして顔を隠したり、真夏でも長袖や襟の詰まった洋服を選んだりする人もいるという。

 「普通の化粧品はカバー力が高くないし、洋服などに色が着くので身体に使用することは難しい。専用のメイクアップ製品であれば全身の皮膚の色の悩みに対応できるが、その存在を知らない人が多いので、一人でも多くの人に届けたいとの思いからMMAが設立された」(小井塚氏)

特定非営利活動法人メディカルメイクアップアソシエーション事務局長の小井塚千加子氏(写真右)、MMA銀座センターインストラクターの長尾陽子氏

 MMAでは、皮膚変色や皮膚障害をカバーするためのメディカルメイクアップの技術指導および普及活動を行っている。使用するのは血管腫で悩む女性が開発した製品をルーツとするカバーマークオリジナルファンデーション(以降、カバーマークと表記)。一般的なファンデーションは透明感あるナチュラルな仕上がりのものが多いが、カバーマークはカバー力が高く、化粧持ちが良い。

 また、一般的なファンデーションは自分の肌になじむ製品を選択するが、カバーマークの場合は基本の12色と調整色6色から2、3色を選び、自分の肌に合うように調合して使用する。そして、最後にフィニッシングパウダーをたっぷりと使用し、ファンデーションを定着・安定させる。このプロセスによって汗や水にも強い仕上がりとなる。

カバーマークオリジナルファンデーション。基本色12色と調整色6色から、自分の肌に合うものを選択する(出所:グラファ ラボラトリーズ)

カバーすることで「気になる」を解決できる

 このように使い方に特徴があることから、MMAでは全国の病院などを回ってメイク技術の指導を行っているほか、東京と大阪にセンターを常設し、無料カウンセリングを行っている。勤務するインストラクターは全員、皮膚変色や皮膚障害に悩んだ経験がある、いわばメディカルメイクアップの先輩だ。

 MMA銀座センターでインストラクターを務める長尾氏は大学生のときに火傷を負い、顔や上半身に痕が残った。形成外科の医師からメイクという方法があることを教わり、ある店を訪ねたところ「とにかくたくさん塗られて驚いた」。もっと良いメイクアップ製品があるはずだと探すなかで、長尾氏はメディカルメイクアップの講座に出合う。製品の良さはもちろんのこと、同じ悩みを持つ人たちに寄り添いながらメイクアップ技術を伝える姿勢に惹かれて、自らもMMAのインストラクターになった。

角層に色素を沈着させるダドレス。気になる部分に丁寧に塗布することで、数日間から1週間はその部分が染まり、白斑を目立たなくする(写真:早川 マナ)

 センターを訪れるのはメイクに関心がある若い女性とは限らない。先天性皮膚疾患の乳児を連れた母親、母斑を持つ少女の将来を心配する祖父母と両親、成長と共に白斑が現れて悩む男子高校生、首筋の白斑のせいで大好きなダンスをあきらめた女性、皮膚変色をカバーして人生を謳歌したい高齢者まで、年齢も性別もさまざまだ。ある親子は「うちの子どもは日々明るく過ごしているし、外見で悩んでいるようには見えないが、将来に向けていろいろな選択肢があることを伝えたい」とセンターにやってきた。しかし、カウンセリングのなかで、その子どもは「ホントは気にしているけれど、親が心配するから悩んでいないふりをしていた」と打ち明けた。

 「あざや傷跡があると、その部分を見られていると感じるもの。たいていの場合は本人が気にするほど、他人は気にしていない。他人から見られてもまったく気にならない人もいる。でも、他人の視線が気になる人にとっては、ファンデーションで隠すことで安心感が得られる。私もそうだった」(長尾氏)

 ファンデーションはメイクしたその日だけのものだが、白斑や脱色素で悩む人には角層に色素を沈着させて目立たなくする化粧水ダドレスも提案する。ダドレスは、新しい皮膚が作られると表面の角層が剥がれ落ちるターンオーバーの仕組みを生かした製品で、角層が剥がれ落ちるまでの数日間から1週間ほど効果が続くため、日常的にメイクの習慣がない男性や子どもにも使いやすい。小井塚氏は「症状や悩みは人それぞれ。気軽な気持ちでセンターにお越しいただきたい」と語る。

(タイトル部のImage:udra11 -stock.adobe.com)