患者の言いなりに手術するとは限らない

 美容外科の患者は外見にコンプレックスを抱えている。きっかけは些細でも、コンプレックスは時に肥大化するもの。水や栄養を与えて樹木を育てるように、日々そのことを気にして隠そうとすることでコンプレックスは大きく育つ。やがて心の奥深くに根を張り、自らもその根に足を取られるようになる。

 「長年のコンプレックスのせいで、本人には認識にゆがみが生じている。『こうなりたい』と思う姿と、他人からの見え方が違っていて、正しいゴールを設定できない。僕はプロとして一般的な見え方を伝えて、目指すべきゴールを一緒に探す。患者の言いなりに、希望する通りの手術をすれば、すべてが満足いくというほど、お顔はシンプルな構造物ではない。不幸な状況だと、整形依存症のような悲劇を招く可能性すらある」

 山口氏が目指すのは最小限の手術で本人のコンプレックスを解消し、かつ周囲からより良く見える整容にすること。そのゴールが共有できれば、全体のシナリオが描ける。手術後には腫れや痛みに苦しむダウンタイムが待っているし、整容の変化の受け止め方も人それぞれだが、最初にゴールを共有できていればそこに立ち返ることができる。

 「何のために手術を受けるのか? 僕は『明るく、幸せに生きていく』ということに尽きると思う」