身体の凹凸にぴったりと合うように造形

 これまで萩原氏は多数の乳房のエピテーゼを製作してきた。生来の大きさや形状はもちろんのこと、乳房は年齢と共に下垂するので、それも考慮しなければならない。机の上に置いた状態では柔らかく広がって見えても、装着して下着を着けると自然なふくらみとなり、左右のバランスがとれるようにする。こういった調整は一人ひとりに寄り添って仕上げるオーダーメイドだからできることだ。

メディカルラボK 萩原圭子氏

 「見た目も大事だが、肌に直接触れる部分が重要。乳房を摘出された方は胸部に手術痕があるので、最初に石膏で型を取り、ご本人の身体にぴったり合うものを作る。だから使い勝手がいいし、装着時の負担も軽い」

 この型どりのプロセスに、歯科技工士としての技術が生かされている。

 萩原氏がエピテーゼを知ったのは歯科技工士の専門学校時代だった。さまざまな資料写真のなかに、義眼を使った顎顔面補綴の写真があり、その精巧さに目を奪われた。当時はエピテーゼの普及前。専門学校の教員に質問をしても十分な回答は得られなかった。

 転機が訪れたのは10年前。米国で特殊メイクを学んできた人がエピテーゼの技術者養成スクールを開校していることを知った。萩原氏は地元で歯科技工士を続けながら、東京のスクールに通い、基礎技術を習得。メディカルラボKを立ち上げる。

 「まずは乳がんを患ったことのある母に無料モニターになってもらったが、出来栄えはボロボロ。母も喜んではくれたが、重くて面倒だとあまり着けてくれなかった。もっと経験が必要だと実感し、知人の紹介などで無料モニターを増やしていった」

 がん患者の会にも出向いた。乳房に限らず、身体の一部を失った人たちが普段何に困っているかを知りたかったからだ。その場で売り込むことはしないが、声をかけられればエピテーゼの説明をする。ぜひ試したいと、モニターを申し出てくれた人もいた。