学生時代に知った整形医療靴の現実

 この仕事に就くきっかけは学生時代に遡る。もともとファッションが好きだった菅野氏はリハビリメイクや装飾用義手などに関心を抱き、義肢装具士の専門学校に入学した。義肢装具士とは義手・義足、失われた身体機能を補助する装具などを手掛ける国家資格だ。そこで初めて整形医療靴の現実を知った。

 「写真を見ると、どれも似た形で、武骨なマジックテープが並び、黒色かこげ茶色で、装飾はない。将来、私も整形医療靴を必要とすることがあるかもしれない。そうなったとき自分が履きたいと思える靴がないことがショックだった」

 整形医療靴は生まれつきの麻痺や四肢欠損などの先天性疾患だけでなく、糖尿病やリウマチ、膝や股関節の変形性関節症、外傷等による足の変形・疼痛に悩む人たちにも必要とされるもの。老若男女を問わず、誰でも必要になる可能性がある。しかし、固定や矯正、症状緩和といった機能面のデザインが重視されるあまり、装具の外観はおざなりにされる傾向にあった。

写真左と中央の靴は外反母趾の方のために製作したもの。ヒールの高い女性らしいデザインだが、ヒールを太くして安定感を高め、疼痛部分の負荷が軽くなるようにマジックテープを活用し、柔らかな革で仕上げた。実は、&MIKIのある兵庫県たつの市は日本最大の皮革の産地。地元のタンナーに加工法や素材選びを相談することもあるという