ソーシャルビジネスとしての可能性

 2019年7月から、二人は「彩希~Beautiful Ear~」のブランド名で補聴器デコチップの販売を開始した。既存デザインから選ぶセミオーダーと、オリジナルのデザインで仕上げるフルオーダーの2パターンがあるが、いずれの場合も初回注文時には補聴器の型を取らなければならない。補聴器はタイプ別に分類すると耳かけ型や耳孔型など5種類程度だが、世界6大メーカーのほかに複数の国内メーカーが多種多様な製品を出している。寸法やデザインが違えば、チップの形状も変わるため、大量生産は難しく、受注の都度一つひとつを手作りで仕上げている。

右の補聴器デコチップは松島氏の補聴器に合わせて制作したもの。補聴器によって大きさ、形状、電池蓋の位置などが異なるため、それ以外の補聴器には装着できない(写真:早川 マナ、以下同)

 初めは北村氏が制作を一手に担っていたが、現在は松島氏も北村氏の手ほどきを受けて制作に挑戦している。作り手が増えれば、より多くの人に補聴器デコチップを届けることができる。さらに今後は制作ノウハウをマニュアル化し、外部のクリエイターを養成したいと考えている。

 「聴覚障害を持つ人のなかにはオフィスで働くのが困難な人がいる。彼らの自立支援として、在宅ワークで制作に携わってもらえないかと考えている。一人で全工程を担ってもいいし、チップの成形と絵付けを分業にしてもいい。それぞれが得意分野で活躍できる場を創出したい」(北村氏)

 SNSでの出会いから生まれた補聴器デコチップ。これからソーシャルビジネスという第二幕が上がろうとしている。

バリエーション豊富な補聴器デコチップ。ファッションやTPOに合わせて補聴器を着替えることができる

(タイトル部のImage:udra11 -stock.adobe.com)