世界的には中国の台頭に注目集まる

 メタロボロームに関して、海外での比較ではどうか。現在、HMTの競争相手としては、米国のメタボロン、オーストリアのバイオクレイトス・ライフサイエンスがあるという。日・米・欧に主要1社、という状況だ。これは、「地元企業のほうが検体を集めやすいという特性があるから」(菅野氏)。

 国・地域別に比較した場合、研究のための予算として、米国は全米衛生研究所(NIH)が多額の資金を投下している。市場規模としては、米国市場が日本の5倍くらいあり、圧倒的だという。ただし、今後数年の市場を見た場合、「中国が、圧倒的なスピード感と投資力でトップになる」(菅野氏)とみられている。「少なくとも、論文の数では米国を抜いた」(菅野氏)といい、各社とも中国市場をどう攻略するか考えているという状況にある。

 彼らとの比較で、菅野氏が「日本が圧倒的に進んでいる」というのは食品領域だ。日本市場では、食品間の細かな違いを区別した商品やサービスが好まれる傾向にあり、その違いを示すためにメタボロームを活用したい企業が多いのだという。「規模の大小に関わらず、弊社や鶴岡を訪ねる食品企業が多い。これは日本の特徴的なところ」(菅野氏)。

 食品領域と並んでもう1つ注目するのが、「長寿に対する予防的な領域」(菅野氏)。いち早く確立できれば先駆けられるとして、インデックス作りを急ぎたいとした。

HMTが描く未来は「予防的社会」

(出所:HMT)
(出所:HMT)
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 HMTが描く最終ゴールはどこにあるのか。菅野氏は、「代謝物や遺伝子情報から、健康に関するポテンシャルリスクがどれくらいなのか分かる世界の実現」だという。数多くの被験者データをもとにした統計情報(コホート)も加味し、「このパターンの人なら、今後ある病気になる可能性はどれくらいあり、生活習慣の改善により遅らせられる」など予測シミュレーションができることだ。

 その実現のために期待するのは、代謝物を簡単に測定できるセンサー技術という。センサーによっては、日々のバイオマーカーの変化をスマートフォンに登録して異変を察知できるようにし、運動や食品摂取などの生活習慣をダイナミックに変化させられるようになるかもしれない。

 「健康への意識が低い人でも、“今のままの生活を続けたらこうなる”と言われたら、何らかの手を打つはず。予防医学的な観点で、医療費を抑制したい」(菅野氏)のだとした。


[参考文献]

1)曽我、平山、杉本、「メタボロームが解き明かす生命のシステム」、KEIO SFC JOURNAL Vol.15 No.1 2015.

(タイトル部のImage:ヤマガタデザイン)