「病気ゼロ」に不可欠な異業種連携

 メタジェンでは、人によって異なる腸内環境を適切にタイプ分けし、腸内環境に基づく層別化医療・創薬・ヘルスケア、すなわち「腸内デザイン」を推進している。しかし、「腸内デザイン」が実装される社会を創るためには、異業種企業との連携が必要不可欠と考えている。同社では、「腸内デザイン」のコンセプトに賛同した企業が参画する「腸内デザイン応援プロジェクト」を運営しており、2019年で4年目になる。同プロジェクトの参画企業の顔ぶれを見ると、当初は食品メーカーが多かったが、最近では保険会社や化学メーカー、分析メーカーなど、参画している企業の業種幅が広がった。

 福田氏は「異分野事業との連携」こそが、「腸内デザイン」の社会実装、そして「病気ゼロ社会」の実現には大事であるという。

 健康維持・疾患予防に対して元々意識が高い人は、食生活などの自らの生活習慣に普段から気を配り、健康情報にもアンテナを張っているため、腸内環境に基づく新たな商品やサービスなどを比較的容易に生活に取り入れられると考えられる。しかし「病気ゼロ社会」を実現するには、普段から健康をあまり意識しない人をも健康にする必要がある。

 そこでメタジェンが掲げるコンセプトが「健康を意識しない健康社会」。その一例として福田氏が挙げるのがスマートトイレ構想。トイレで排泄された便をセンサーにより自動的に調べ、その結果をスマートフォンなどに転送することで、日々意識せずともトイレに行くと自分の健康状態がモニタリングできるというしくみだ。その他にも、スマートオムツやスマートハウスなど、IoTとの連携を通じ、健康を意識しなくても自然に健康になるシステムの構築を目指している。

「健康時の腸内環境データ」が重要になる

 福田氏はまた「自分が健康な時の腸内環境データをとっておくこと」の重要性を説く。いったん病気を患えば、健康状態のときの情報は失われてしまう。そうなると、「健康時の状態に戻す」ために、どこに目標を置けばいいか、何をすればいいかを知ることが難しい。

 下の図は、健康な22人の腸内細菌叢のバランスを示したもの。全員健康であるにもかかわらず1つとして同じパターンの腸内細菌叢が存在しないことが分かる。となると、もし仮に自分の腸内細菌叢のバランスが崩れたときにどうするべきか。戻すべきは、他の健康な誰かの腸内細菌叢のパターンではなく、その人自身が健康だった時のパターンであるはずだ。

22人の健康な20〜30代の男女の腸内細菌叢データ。これを見ると、個人差が大きいことが分かる(出所:メタジェン)

 「腸内細菌叢のバランスやそこから産生される代謝物質と健康や疾患との関係など、その重要性が明確に分かってきたのはここ10数年であり、食品やサプリメントあるいは薬剤の代謝など、個々の腸内細菌の機能の詳細はまだまだ分かっていないことが多い」と福田氏は言う。便にはその謎を解明するための情報が詰まっていることから、メタジェンでは便を「茶色い宝石」と呼んでいる。同社による「茶色い宝石」の研究はまだまだ続く。

(写真:向田 幸二)

(タイトル部のImage:ヤマガタデザイン)